認知症ケアの重要性を知りつつも、その難しさに悩む介護職は多いでしょう。
だからこそ専門的な知識や技術は、介護職の強い武器になります。
今回は認知症ケアに特化した介護資格、認知症ケア専門士をご紹介します。
記事の内容
- 活かせる仕事やメリット
- 受験資格や試験問題
- テキストやeラーニング等の勉強方法
資格の取得方法からその後の事まで、認知症ケア専門士について徹底解説します。
准専門士と上級専門士は、記事の最後で解説します。
急ぎの方は、見出しのお好きな箇所からどうぞ。
認知症ケア専門士とは
認知症ケア専門士とは、「日本認知症ケア学会」による民間の認定資格です。
介護従事者などに向けた、認知症ケアの知識・技術を証明する資格ですね。
認知症ケアの知識や技能、倫理を備えた専門家を養成し、認知症ケアの向上を目標とします。
認知症ケア専門士を取得するには、協会が実施する認定試験に合格する必要があります。
未経験者向けの「認知症ケア准専門士」も存在。
認知症ケア専門士の受験資格
認知症ケア専門士の受験には、下記の実務経験が必要です。
「認知症ケアに関する施設、団体、機関等において、過去10年間の間に3年以上の認知症ケアの実務経験を有する者」
認知症ケアの専門施設である必要はなく、認知症に携わっていれば認められます。
保有資格や職種等は、問われません。
介護の仕事で活かせる「専門性の高さ」がメリット
繰り返しですが、認知症ケア専門士は介護士やケアマネ等の介護従事者に向けた資格です。
受験資格にもある通り、既に介護の仕事で働いてる方向けですね。
当資格は、数ある認知症資格の中でもかなり専門性が高い内容です。
受験資格だけでなく、試験内容をみても取得難易度は高め。
しっかりした学習が必要になり、認知症ケアの専門性をアピールできるメリットがあります。
「機関認定制度」で施設の専門性をアピール可能
日本認知症ケア学会では、機関認定制度を創設してます。
これは「認知症ケア専門士が所属し、一定条件を満たす事業所を利用者に情報提供」するモノ。
つまり「認知症ケアの専門家がいる施設ですよ」と、利用者にアピールできる制度です。
施設価値を高める人材として活躍できます。
公式サイトからも、認知症ケア専門士の所属先を検索できます。
認知症ケア専門士の受験申込方法
認知症ケア専門士を受験するには、受験の手引きを入手します。
ここに「受験願書」や「認知症ケア実務経験証明書」など、必要書類が同封されてます。
書類案内に従い、必要な手続きを行いましょう。
ちなみに試験日程と応募期間は、下記が目安。
認知症ケア専門士の試験日程目安
- 『1次試験 (筆記)』
試験日:毎年7月頃 応募期間:3月~4月頃 - 『2次試験 (論述・面接)』
試験日:毎年12月頃 応募期間:8月~9月頃
※論述問題は応募時に提出
1次試験の応募期間に間に合うよう、受験の手引きを入手しましょう。
詳細な日程は、公式サイトでご確認ください。
※受験の手引きも、認知症ケア専門士公式サイトから入手できます。
認知症ケア専門士の試験内容
認知症ケア専門士の試験には、合計2回の試験があります。
内容は「筆記による1次試験」、「論述・面接による2次試験」ですね。
出題内容や合格基準など、順を追ってご説明します。
コロナの影響もあり、2020年度以降は日程や内容の変更があります。
変更点の追記もしてますが、受験予定の方は公式サイトも必ずチェックして下さい。
1次試験の試験問題と合格基準
認知症ケア専門士の1次試験は、毎年7月頃に実施されます。
下記は1次試験の概要です。
試験日と応募期間 | 試験:毎年7月頃 申請:3月~4月頃 |
---|---|
試験方法 | 5者択一のマークシート方式 (全200問(4分野/各50問) |
試験問題分野 |
|
受験料 | 1分野につき3,000円 |
合格基準 |
|
合格通知 | 8月頃に投函 |
受験地は「札幌、仙台、東京、名古屋、京都、福岡」から選択します。
コロナの影響もあり、現在はWeb試験となりました。
※2022年度も筆記はWEB試験
4分野は一度に合格できなくてもOK
1次試験は、4つの分野で各50問出題されます。
試験時間は、1分野につき1時間。
1次試験を突破するには、4分野全てで合格する必要があります。
認知症ケア准専門士の保有者は「1次試験が免除」
認知症ケア准専門士の資格をお持ちの方は、下記条件を満たすと1次試験が免除になります。
1次試験の免除条件
- 准専門士の取得後5年以内(就学期間の免除規定あり)
- 受験する年度の受験資格(「認知症ケアの実務経験」)を満たすこと
准専門士は、実務経験が無くても受験できる資格ですね。
詳しくは後半で説明します。
2次試験の試験問題と合格基準
1次試験に合格すると、2次試験の受験が可能になります。
下記は、2次試験の概要です。
試験日程 | 【論述の提出期間】 毎年8月~9月頃 【面接】 毎年12月頃 |
---|---|
試験方法 | 【論述】 事例問題に対する論述 【面接】 6人を1グループとした面接 (スピーチとディスカッション) |
受験料 | 8,000円 |
合格基準 | 論述評価で、下記要件を満たす
|
合格通知 | 1月末頃に投函 |
論述問題は、1次試験の合格通知に同封されます。
案内に従い、期間内に提出して下さい。
※21年度以降は「追加課題(1題)を課した論述試験と倫理研修の受講」
面接試験は中止です
試験合格率は5割程
認知症ケア専門士の合格率は、およそ5割程。
第1回から第14回までの合格率は、約45%~60%位を推移してます。
参考:認知症ケア専門士 公式サイトより
「試験勉強は必須」と言える難易度ですね。
ただ1度合格した内容は無駄にはなりません。
失敗しても挑戦を繰り返せば、少しずつ合格しやすくなる資格ですね。
認知症ケア専門士の勉強方法
ここからは、認知症ケア専門士の試験対策を紹介します。
独学に使える「公式テキスト」や「過去問」。
動画や教材による「eラーニング講座」についてお伝えします。
認知症ケア専門士の「テキスト」「過去問題集」
認知症ケア専門士のテキストは、公式の他、様々な所から出版されてます。
公式テキスト
まずは公式テキストからご紹介します。
公式テキストは、「筆記の各分野1冊ずつ」と論述問題に使える「事例集」。
計5冊で、下記タイトルで出版されてます。
- 認知症ケアの基礎
- 認知症ケアの実際Ⅰ:総論
- 認知症ケアの実際Ⅱ:各論
- 認知症ケアにおける社会資源
- 認知症ケアの実際Ⅰ:事例集
手堅くいくなら、これらの公式テキストの入手から始めると良いでしょう。
気になる人は、後述する他社のテキストも検討してみて下さい。
過去問題集
認知症ケア専門士では、過去問というより予想問題集の形で、色々な出版社から出てます。
オススメの書籍を2冊、ご紹介します。
認知症ケア専門士再現過去問題集
こちらは、過去問を元に作成した予想問題集。
出版元は後述のeラーニング講座も手掛けており、実績もあります。
この1冊でらくらく合格認知症ケア専門士 テキスト&予想問題集
こちらは1冊で、「1次試験の4分野のテキスト・問題集」として使えます。
出費が気になる方は、手始めにこちらをどうぞ。
認知症ケア専門士の「eラーニング講座」
株式会社アステッキでは、認知症ケア専門士のeラーニング講座に対応してます。
eラーニングとは、パソコンやスマホを使った学習方法ですね。
当講座では、下記の様な学習が可能です。
認知症ケア専門士のeラーニング講座内容
- 動画によるeラーニング講座
- 専用のテキスト、問題集、模擬試験
- アプリを使った学習
※「スマホ」「パソコン」「タブレット」で利用可能
動画による学習をメインに、好みでテキストや問題集もセット購入可能。
1次試験と2次試験にそれぞれ対応してます。
テキストや模擬試験付きのフルセットだと、24,800円です。
アステッキは過去問の出版も手掛けており、教材にはかなり力を入れてます。
2019年の合否調査では、受講生の合格率は90.6%との事。
公式サイトを見て、気になったら試してみてはどうでしょう?
認知症ケア専門士の更新方法と単位
認知症ケア専門士は、5年ごとに資格更新が必要です。
資格の更新には、5年以内に30単位を獲得する必要があります。
単位は学会が主催する講座、または認定団体の講座への参加などで得られます。
20単位以上は”領域Ⅰ”および”領域Ⅱ”より取得しなければなりません。
領域と獲得できる単位は、以下の通り。
- 領域Ⅰ 「学術集会等への参加 (1~8単位)」
- 領域Ⅱ 「生涯学習プログラム等への参加 (1~5単位)」
- 領域Ⅲ 「機関紙等への論文発表 (1~8単位)」
5年以内に30単位を取得できない場合、申請する事により1年間の延長を受けられます。
※申請に必要な書類は、公式サイトでダウンロード出来ます。
他団体によるものの場合、「参加証明できる資料」が必要です。
「認知症ケア准専門士」と「上級専門士」
認知症ケア専門士には、他にも2つの資格が存在します。
実務経験が無い人向けの「認知症ケア准専門士」。
上位資格である「認知症ケア上級専門士」ですね。
これらについても解説します。
「認知症ケア准専門士」の受験資格と試験内容
認知症ケア准専門士とは、「介護経験のない人へ認知症ケアの理解を広める」為の認定資格。
従来の資格と比べると、下記の違いがあります。
認知症ケア准専門士の特徴
- 18歳以上で実務経験ない人が受験できる
- 更新手続きが無い
- 試験内容は、従来の1次試験と同じ
試験内容は、1次試験の筆記問題と同じです。
※21年度はWEB試験方式で実施
今後も、同様の方式が取られる可能性が高いです
合格基準は、4分野で70%以上の正答がある事ですね。
合格者は、認知症ケア専門士の1次試験の免除があります。
准専門士の応募と試験時期
応募には、公式サイトから「受験の手引き」を取り寄せます。
※コロナによる影響もあるので、詳しくは公式サイトもご確認ください。
学習用のテキスト等は、1次試験の内容を使用できます。
こちらからご覧になった方は、1次試験の内容をご確認下さい。
「認知症ケア上級専門士」の受験資格と試験内容
認知症ケア上級専門士とは、「ケアチームにおけるリーダー、地域のアドバイザーとして活躍する事が期待できる専門士」に与えられる資格です。
試験に合格する事で取得出来ますが、その受験条件は複雑なので注意。
認知症ケア上級専門士の受験条件
- 認知症ケア専門士の経験が3年以上
- 試験年の3月31日から過去5年間で、単位を30単位以上取得
- 「上級専門士研修会」を修了している
- 受験申請期間の最終日までに,下記のいずれを満たしている
1.上級専門士制度規則施行細則にある学術集会,地域部会研修会等での演題発表ならびに事例報告(筆頭者のみ)
2.上級専門士制度規則施行細則にある査読制度のある機関誌等への論文・事例発表(筆頭者のみ)
単位は、認知症ケア専門士の資格の有効期間内に取得したものに限られます。
応募は手引書を取り寄せ、必要書類を揃えて提出します。
試験内容は全50問の5択マーク式で、正解率70%以上で合格です。
上級試験も年1回ですが、こちらもWEB試験方式に変更されました。
資格の更新について特別必要な事はありませんが、保持の為には「認知症ケア専門士」としての更新は続けなければなりません。
「上級専門士研修会」について
「上級専門士研修会」とは、受験要件を満たす為に必要な研修です。
先ほど紹介した「認知症ケア上級専門士用テキスト」を使用し、動画視聴とレポート提出を行います。
※生活様式の変化に伴い、Web配信の形に変更になった
上級専門士研修会の内容
- チームアプローチ(倫理を含む)
- チームアプローチのまとめ・レポート作成
- ケアマネジメント
- ケアマネジメントのまとめ・レポート作成
参加費は7,000円。
申し込みは、公式サイトから可能です。
最後に
長くなりましたが、最後までお読み頂きありがとうございます。
認知症ケア専門士は、民間資格ながら専門性も評価も高い資格です。
介護の主要資格だけでは得られない知識、技術を補ってくれます。
また認知症に関する資格は他にもあり、専門的な学習が出来る介護資格も多々あります。
介護士として実務スキルをアップしたい方は、ぜひチャレンジしてみて下さい。
コメント