介護が必要な時、特に車椅子の使用時に大変なのが「移乗」という動作。
ベッドや車椅子に移る動きは毎日必要ですし、回数も多くなりがち。
自力でも介助でも、身体への負担が大きいですよね。
そんな時に活用したいのがスライディングボードという福祉用品。
持ち上げる動作をせず、座ったまま移乗動作が出来る商品です。
スライディングボードとは
スライディングボードとは、ベッドから車椅子などへの移乗を助ける目的の福祉用品です。
※移乗ボードやスライドボード、トランスファーボード等とも呼ばれる
移乗の際の橋渡しになり、座ったままの「座位移乗」が可能になる商品ですね。
上手に使えば、要介護者だけでなく介助者の負担軽減にも繋がりますね。
「座位移乗」を助ける福祉用品
スライディングボードを使えば、座ったままでベッドや車椅子に移る事が出来ます。
商品リンクになりますが、実物をご紹介します。
「長方形の大きい下敷き」みたいな形が特徴ですね。
これをベッドや車いすの間に橋として設置し、その上を滑って移動できます。
表面は滑りやすく、ボード上でお尻を滑らせやすいのが特徴。
裏面には滑り止めが付いており、しっかりと固定できます。
スライディングボードの多くは、「車椅子~ベッド間の移乗」を想定した商品。
様々な移乗先に対応した商品もありますが、サイズや強度には注意し商品を選ぶ必要があります。
スライディングボードとシートの違い
スライディングボードに似た商品に、「スライディングシート」があります。
その名の通り、ボードでなくシート状の商品ですね。
2重にシートを敷き滑らせる、あるいは内側が滑る筒状のシートなのが特徴。
対象者の下に敷き滑らせて使用します。
移乗だけでなく、ベッド上での横や上への移動にも使用可能出来ます。
スライディングボードの使用環境
スライディングボードを使う際は、基本的に下記環境で使用します。
- アームレストの跳ね上げや着脱が出来る車椅子
- フットレストの着脱が出来る車椅子
- ベッドの高さ調整が出来る
ボードでの並行移乗という動作上、どうしてもアームレストが邪魔になります。
差し込みやすいボードもありますが、それでも跳ね上げ対応の車椅子での使用が条件です。
また転落の危険もある為、介助での使用を想定した商品が中心です。
自力移乗に対応した商品もありますが、商品説明を確認し安全に使用して下さい。
高さ調整できる介護ベッド推奨
また平行移乗の為には、ベッド高さも調整できる必要があります。
介護ベッドには標準搭載されてる機能ですね。
抱えての移乗介助を行う際にも、高さ調整出来た方が便利です。
足をぶつけたり、引っ掛かる等の危険もあるので、着脱できる物がベストです。
また介助の際は、ベッド柵に掴まってもらうと姿勢が安定し安全です。
L字柵の移乗バーを使うとより掴まりやすいので、検討して下さい。
「介護保険でのレンタル(貸与)」が可能
スライディングボードは、介護保険では特殊寝台付属品としてレンタルが可能です。
特殊寝台付属品とは、簡単に言うと介護ベッド周りの用品ですね。
他には、ベッド柵やマットレスなどが該当します。
特殊寝台付属品のレンタルは、原則要介護度2以上の方が可能です。
(要支援及び要介護1の方は給付対象外)
介護保険でのレンタルする場合、1~3割負担で利用可能です。
(※原則1割ですが、所得に応じ2割~3割負担となる)
スライディングボードの使い方(移乗方法)
改めて、スライディングボードの使い方を解説します。
下記は、車椅子からベッドへの移乗介助の手順です。
- ベッド側に対し、25度位の角度で車イスを近づけ、ブレーキを掛ける
- ベッド高さを車椅子座面に合わせ、アーム・フットレストを外す(跳ね上げる)
※上体の転落に注意、対象者のベッド側の足を少し前に出すともつれにくくなる - 介助者が車椅子の正面に立ち、車椅子側の腕を脇の下にまわし、上体を支える
対象者の上体を傾けさせ、ボードを移乗する側の臀部に差し込む - 介助者はベッド側の腕を脇の下にまわし、反対側の手で腰を支える
- 介助者が移乗先を向く様に体重移動をしつつ、ボードをゆっくり滑らせる
- 移乗後は、ボードを立てるように抜くと楽に抜けます
ベッドから車椅子へ移る場合、置き換えての逆動作になります。
言葉だけでは、分かりにくい部分も多かったと思います。
またこれ以外の介助方法も存在します。
なので、Youtubeよりプロの解説動画をご紹介しておきます。
下記は「移乗バー」に掴まってもらう方法ですね。
スライディングボードのおすすめ商品
ここからはスライディングボードには、どんな商品があるのかをご紹介。
定番とも言える商品の詳細をお伝えしつつ、オススメ商品としてまとめました。
分からない時は、専門店・専門家などに相談して下さい。
パラマウントベッド「イージーグライド」
こちらは定番ともいえる、標準的なスライディングボード。
「様々な移乗先に対応」との事で、4サイズで発売されてます。
パラマウントベッド「イージーグライド」
参考価格 ※Amazonより | 約20,000円~ |
---|---|
サイズ |
厚みは0.5cm |
耐荷重 | 使用者最大体重135kg |
これだけバリエーションがあると、サイズ選びが難しいところ。
長ければ良いワケでもなく、必要以上に長いと逆に使いにくくなります。
移乗距離が長いと危険ですので、なるべく移乗距離は短くして使いたいですね。
ベッド・車椅子間で使用しましたが、無難にオススメ出来る商品ですね。
強度と柔軟性が魅力の商品ですので、上手くサイズ選び出来れば様々な場所で使えます。
使う場所を見て、適正なサイズ選びをすると使いやすさに繋がるでしょう。
モルテン「イージーモーション(Bタイプ)」
こちらは、自力・介助の両方に対応したモデル。
設置時の面積を広く取れる「ブーメラン型」のボードです。
モルテン「イージーモーション(Bタイプ)」
参考価格 ※Amazonより | 約11,000円 |
---|---|
サイズ | 長さ78×幅38×厚さ0.5cm |
耐荷重 | 使用者最大体重130kg |
イージーモーションには、上記のブーメラン型のBタイプ。
長方形型のSタイプの2種類があります。
Sタイプは従来型のスライディングボードで、間隔が狭い時に使いやすいモデル。
ここで紹介したBタイプは、自立での使用も想定された商品です。
※説明書にも、自力移乗の説明記載がある
Sタイプは介助でのみ使用
口コミの方でも、病院で使用していたので同じ物を購入したなんて内容もありました。
ラックヘルスケア「フレックスボード」
おまけとして、スライディングシート寄りの商品もご紹介します。
フレックスボードという物で、寝たままの姿勢で移乗できる商品です。
フレックスボードは、ボードの周りのスライディングシートで滑らせる商品。
画像では分かりにくいですが、ボードなのに柔軟性もあり身体にフィットします。
寝たままの移乗ですので、リクライニング車椅子を使用する必要があります。
またストレッチャー浴など、寝たままの入浴の移乗時にも使えます。
フレックスボードの使用感想
実は縁あって、介助でフレックスボードを数回使用した事があります。
せっかくなので、介助者目線での使用感もお伝えします。
まず感じたのは、ボードによる安定感がありつつも、柔軟性があり使いやすい点。
ただやはり慣れは必要で、スムーズな移乗にはコツが要ります。
不慣れなうちは差し込み時の感覚も難しく、滑らかな移乗が難しい事も…。
コツを掴めば介護する側、される側共に負担軽減できそうですね。
また「寝たままの移乗」を行うには、介助者が2人必要ですし準備も手間もかかります。
なので、誰かれ構わず使用すれば良いというワケでもありません。
座位は保てないけど軽い方など、状況によっては抱えての介助の方が楽な場面もあります。
しかし身体状況的にそれが難しい方、重くて移乗が大変な方などに対しては重宝します。
本当に「寝たままの移乗が必要な時」、場面や用途が合えばすごく楽になる商品です。
なかなか良い福祉用品ですので、機会があればぜひ試してみて下さい。
あとがき
今回はスライディングボードについてお伝えしました。
介護用品は「使ってみたら意外と便利」という物が多いですね。
一見よく分からないけど、使いこなせれば大幅に負担軽減できるという感じ。
移乗介助は、つい抱えて力まかせに行いがちです。
回数も多いですので、腰の負担少なく行えるよう、色々と考え工夫したいですね。
高齢者の動作を助ける介護用品は、他にも沢山あります。
例えば、安全にお風呂に入るための「バスボード」。
トイレで立ち上がる時の「手すり」等々…。
ちょっとした便利グッズで、負担を減らしつつ安全な生活に繋げる事が出来ますよ。
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