家族が入居している介護施設より、「退去してほしい」と求められる事があります。
老人ホーム等を利用してる方のご家族は、どこかで退去の不安もあるのではないでしょうか?
ここでは、「どんな理由で介護施設から強制退去になってしまうか」を解説します。
また強制とはいかなくとも、転居を考えるべき時もあります。
その時になってあわてないよう、退去の可能性を察知できるようにしておきましょう。
原状回復など、退去時の注意点も併せてお話しします。
老人ホームから退去・転居となる理由
老人ホームから退去が必要になる時は、住み続ける事が難しくなった時です。
施設側より退去を求められる事もあれば、本人の生活の為、転居が必要になる事もあります。
入居できる介護施設(当記事では老人ホームと表記)は、それぞれで役割や想定する利用者が違います。
提供できるサービスも異なれば、入居・退去条件も異なります。
強制退去で無くとも、そこでの生活が現実的でなくなる事もあります。
まず施設側より「退去して欲しい」と言われるのは、以下の様な理由になります。
- 継続的な医療ケアが必要
- 他入居者とトラブルになった
- 料金の滞納
継続的な医療ケアや長期入院が必要な時
医療ケアが必要になった時は、退去や転居を考えるタイミングです。
老人ホームでは、医師や看護師が配置されていても常駐はしていません。
また看護師が配置されているとも限りません。
施設探しの際は、「医療サービスの充実度」というのも1つの指標になりますね。
長期にわたる入院も退去理由となり得ますので、施設の規定をよく確認しておきましょう。
※「特別養護老人ホーム」では、基本3か月以上の入院で退去となります。
また特養など看取りに対応した施設では、家族希望を確認される事があります。
看取りを希望しない、施設の説明やサービスに納得できない。
そんな時も、転居や入院等を考えなくてはなりません。
- 施設での看取りを希望するか
- 病院での積極的な治療を望むか
最期に向け、どういった生活を望むのかよく考えておく必要があります。
認知症などによる他入居者とのトラブル
認知症の悪化などで、他入居者と頻繁にトラブルを起こしてしまうと、退去理由となり得ます。
些細な事であれば退去にはなりませんが…、
周囲の生活が脅かされてしまう様では、施設に住み続ける事は難しいでしょう。
トラブルによる強制退去の線引きは、老人ホームにより異なります。
担当者に過去の事例などを尋ねてみましょう。
認知症などで精神的に難しい状態にあると、他者に対し攻撃的になるケースもあります。
物取られ妄想、介護拒否など、施設でのサービス提供が難しくなる事も。
認知症対応の有無、認知症ケアの充実度なども、老人ホームを選ぶ際のポイントになりますね。
介護度や入居期間による退去
利用者の状態(介護度)の変化により、退去が必要になる事もあります。
退去の必要は無くとも、そこでの生活が現実的でない事も出てきます。
また入居期間を設定している施設もあるので、注意しましょう。
例えば、以下の様な老人ホーム。
特養は介護度3以上が基本的な入居条件としており、介護を必要とする方の為の施設です。
もし状態が改善し、自立や要支援と判断されれば転居の可能性があります。
後者の老健は、入居期間が設定されている施設ですね。
定められた期間を過ぎれば、在宅復帰や別の施設へ移る事となります。
※老健は在宅復帰を目指す施設
加えて、元気な人(要支援)の方を対象とした施設もあります。
介護サービスがなく、住居や食事の提供、見守りなどが中心の施設ですね。
そこで入居者が要介護が状態になれば、訪問介護などが必要になります。
24時間介護が必要になれば、入居が認められても適した環境とは言えなくなります。
そんな時は必要に応じ、同法人内の施設などを紹介される事もあります。
本人の帰宅願望や介護拒否
入居する本人が施設での生活を拒否し、帰宅を強く希望した場合も退去理由になり得ます。
認知症が無い「クリアな人」の場合は、特に対応が難しいようです。
私事ですが…、
老健を利用していた家族が帰宅願望により施設から戻ってきました。
リハビリの意思もなく、「帰る」の一点張りで対応が困難との事でした。
施設職員さんには、以下の様に話を受けてます。
- 「認知症の方ならごまかせたかもしれないが、クリアな人はそうもいかない。」
- 「本人の為にも、一度自宅に戻って落ち着き、違うサービスを考えてはどうか?」
デイサービスを試した時も、「こういう所はお好きではないようで…」と言われてしまい、間接的にNGといった感じでした。
ちょっと話がそれてしまいましたが、本人が納得しているかも重要という事です。
もし難しければ、お互いが納得できる代替手段を探す必要があります。
特に入居直後は、本人も不安が強くなります。
施設での生活に慣れ、精神的に落ち着くまでは時間がかかります。
家族がマメに面会に行くなどして、フォローに努めましょう。
多い退去理由は「継続的な医療」と「長期入院」
繰り返しですが、「特養」や「介護付き有料老人ホーム」など…、
たとえ看護師や医師が配置されている施設でも、24時間体制で常駐しているわけではありません。
日中は看護師等がいるが、夜間は介護職のみという施設が多いです。
これは現場の介護士としても、かなり実感しています。
看取り対応の施設に勤めてますが、そんな施設でも医療ケアの必要性で退去される方もいます。
ご家族が積極的な治療を望まれる事もありますが…
本人の苦痛を和らげるには、どうしても医療ケアが必要になる事もあるのです。
またグループホーム等の医療対応が難しい施設では、入院という形で退去される方も多かったですね。
基本的に看護師はいないので、痰吸引や経管栄養が必要になると住み続ける事が難しいです。
また施設退去後でも、病院にずっと入院させてはもらえないので注意です。
法人グループの別施設を紹介してもらい移れる可能性もあるかもしれませんが、そういった「退去後の行き場」についても、事前によく考えておきたいですね。
施設都合により退去を求められるケースもある
施設の運営が難しく閉鎖する、人員不足による縮小など、施設都合で退去を求められる場合もあります。
その場合は、関連施設などを紹介され転居を促されるという事があるようです。
何にせよ、利用中(予定)の老人ホームの運営状況についてもアンテナは立てておきましょう。
介護関係で勤務していると、同地域の施設についてよく情報が入ってきますが…
「閉鎖」はほとんど聞きませんが、縮小はたまに聞きますね。
「特養併設のデイサービスが利用者が少なく、閉鎖」なんて話もたまあります。
実際に多いのは、介護職員が確保できない為の受け入れ制限だと思います。
割と職員不足でも無理して回している施設が多く、余程の事だろうと思いますね。
介護士がより魅力ある仕事になり、利用者の安心に繋がって欲しいものです。
退去時の「原状回復費用」について
退去時に居室の状態によって、「原状回復費用」を支払わなければならない事があります。
「原状回復費用」というのは、使っていた居室をもとの状態に戻すための費用ですが、負担しなくてはならない時とそうでない時があるので、知っておきましょう。
「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」において、【原状回復の費用負担については「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に】とあるので、定義を確認してみます。
難しい言葉が並びますが、「普通に使っている以上にひどい損傷がある場合は復旧してね」という事。
故意や過失によって生じたものについては、費用を払わなければなりません。
必要があって、個人で設置した棚などの撤去費用についても支払う必要があります。
建物は何もしなくても年月を重ねると、汚れや劣化が出てきます。
普通に使っているうちに発生した経年劣化については、施設の負担となります。
原状回復費用でトラブルになるケースもあるので、よく理解しておきましょう。
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