特別養護老人ホームが「職員不足で受け入れ制限」その実態と問題点

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特養の介護士不足が深刻 受け入れ制限もニュース

全国の特別養護老人ホームにおいて、介護人材不足が深刻化しています。

「独立行政法人 福祉医療機構(WAM)」の調査において、下記データが明らかになりました。

  • 72.9%の施設で職員不足
  • 12.9%が特養本体・併設施設で、利用者の受入れを制限

受け入れ制限をしている本体施設では、平均して利用率が 82.2%、13.9 床が空床。
職員不足による受け入れ制限も、昨年より深刻化しています。

私も介護職として、特養での勤務経験があります。

そこで当記事では、調査結果を追いつつ、特養が抱える問題と実態を介護士目線で解説します。
※当記事では、「独立行政法人 福祉医療機構(WAM)」の調査内容を参考にしています。
平成30年度「介護人材」に関するアンケート調査の結果について
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特養の7割で介護職員が足りない

調査では、特別養護老人ホームの7割程が「職員不足」と答えています。
不足している職種は、99%の施設で「介護職員が足りない」と回答。

受け入れ制限をする施設があるのも、無理がありません。

もちろん対策として、どの施設でも積極的に求人を出してますが…、
募集しても人が来ない」のが現状です。

何故職員がいないの?

労働人口の減少問題もあるのですが、賃金水準の低さ他施設との競合が主な原因です。

事業所間で、介護職員の取り合いになっており、賃金アップでの優位も取れず、決め手に欠ける印象です。
介護労働安定センターの他調査でも、同様の結果が出ています。

疑問

勤務時間や休日が不定期なのも、敬遠される様です。
そういった職員には、パートや派遣といった働き方が好まれます。

また採用の敷居が低いのも、離職(転職)に繋がっていると思います。

「辛かったら逃げて大丈夫」という安心感から、職場を転々とする方もいます。
実際そうしないと、自分の身を守れない環境もあるのも、また事実です。

一方「介護の仕事を続けたい」と考える職員も多いですが…
仕事環境で転職せざるを得ない状況に追い込まれてます。

パートや派遣の働き方が好まれるのも、自分を守る手段の1つだからでしょう。

職員不足は負の連鎖を呼ぶ

職員がいない時は、今いる職員でカバーするしかありません。
…という事は、残業休日出勤が増える事になります。

そうなると、労働環境悪化による離職が増えます。
職員育成にも支障があり、新規職員の定着率も低くなります。

職員不足の対応策は、「求人」の次に回答を集めたのが「時間外労働(50.6%)」。
求人を出しても人が来ない、「残業・休日出勤して下さい」という事です。

そして職員耐えきれず、他の介護施設に移っていくという構図。

落ち込み

また残業申請がしにくい職場も多いかと思います。
シフトであらかじめ設定してあれば申請できるが、それ以外はあまり認めてくれない職場も。

理解できる事情ではありますが…
介護は、利用者対応でイレギュラーな事態が発生しやすく、なかなか時間通りにいきません。

介助量の多い特養だと、定時で終われる仕事量でない事も多々あります。
毎回事情を説明し、許可を取るのも手間という事で、サービス残業も発生してます。

対策しようにも、サービスの質を下げるしかなく、利用者様の事を思えば実施しにくいでしょう。
職員のモチベーション低下という問題もありますね。

勤務の現状

特別養護老人ホームには、24時間介護職員が必要です。
その為、「常勤」の存在は非常に重要。
※常勤は、全ての時間帯で出勤対応可能

現場にいる身としては、特に常勤職員の不足を感じます。
「限られた時間で働ける職員はいても、フルタイムで働く職員がいない」のです。

その為、昼間の人員は確保できても、朝・夕・夜間等は、職員配置に穴が開きます

常勤・非常勤のバランスが崩れている職場も多く、「職員数はいるのに、残業や休日出勤がある」という環境も珍しくありません。その負担を多く被るのは、常勤やリーダー格の職員です。

処遇改善の効果は?

賃金アップの為、処遇改善が支給されていますが…、
施設の加算取得状況、配分方法など、まだ課題は多い様に思います。

要するに、介護士にとって実態が分からないモノなんです。
※一応、基準を定め周知することにはなってます

処遇改善とは?(処遇改善の解説記事)
昇給や研修、環境など、介護士が働きやすい環境と認められた事業所に支給。
介護職の賃金アップに使用されるが、分配方法は事業所に任されている。

他の施設との比較も難しく、ボーナス感覚で支給する事業所も多いです。
そもそも施設内での、分配基準もよく分からない職場もあります。

良し悪しの判断がしにくく、採用・定着率アップの為のアピール力は弱いと思います。

ポイント

…余談ですが、私の勤める施設は、処遇改善が良い額支給されています。
総額で見ると、地方で介護士をする分には、まぁまぁ良い給料という感じ。

こんな施設でも、求人を出してても応募がほとんどありません。

確認すると、処遇改善分はカットされた給料が求人情報に記載されてました
ここらの記載ルールは疎いですが…、額を定めにくく掲載しにくいのでしょうかね?

特養の「受け入れ制限」の現状

調査報告に、特養の受け入れ制限についてありましたね。

全体の4.1%が特養本体施設での受入れ制限
8.8%が併設する施設での受入れを制限

施設説明も兼ね、どういう事か見ていきます。

併設施設の受け入れ制限

特別養護老人ホームでは、デイサービスを併設し、ショートステイ(短期入所)にも対応。
併設施設というのは、これらの事。

今回の調査では、特養本体と合わせて、12.9%が受け入れ制限をしてます。

当然併設サービスにも、介護職員が必要です。
職員がいなければ、利用者の数を減らして対応するしかありません。

これらは特養の運営において、大事な収入源でもあります。
特養本体の稼働率は高いのに、併設サービスの利用者が少なく、運営が厳しくなる事も。

別問題として、利用者を集められない施設もあります。

特養本体の受け入れ制限

特養の入居者についても、受け入れ制限をする施設があります。

本体施設での受入れを制限している特養では、平均利用率が82.2%13.9 床が非稼働

これは受け入れ制限をしている為に、平均して13.9床が空いているという事。
入居できる部屋があるのに、対応できない為にわざと空けてます。

空床があるという事は、施設の利益も減りますから避けたい事態です。

考える看護師

先ほども述べましたが、職員不足への対策は、主に残業と休日出勤です。
受け入れ制限はせず、無理やり業務を回す職場がほとんどです。

にも関わらず、制限をしている状況は、かなり深刻であることはお分かり頂けると思います。

昨年の調査では、同様の施設が「利用率85.3%、11.1 床が空床」でした。
職員不足の加速が分かると思います。

特養の仕事内容でみる問題点

特別養護老人ホームは、入居者の介護度が高く、身体介助量が多いのが特徴。
仕事が「どこがどう大変なのか?」、ちょっとお話ししておきます。

介護士目線で見ると、ここで述べるような問題点があります。

介助量の多さと事故リスクの高さ

業務内容でみると、「食事・入浴介助」で職員不足を感じる施設が多いそうです。

介護度が高いという事は、介助なしに「食事・入浴が出来ない方が多い」という事。
所謂、寝たきり・全介助の方

対策として、入浴や食事介助専門のパート職員を配置する施設もあります。

個人的に専門パートの採用や、その働き方についてもっと認知されていくと嬉しいです。
特養においては、特に必要な存在だと感じます。
入浴や食事介助の専門パートとは?

食事介助の実態と問題

今回特にお話ししたいのは、食事介助の話。

例えば10人を1人で担当するとして、うち4~5人を食事介助という光景もよくあります。
職員1人で、何人もの利用者を同時に食事をしているのです。

また介助が必要な方は、嚥下機能の低下がみられ、
「誤嚥」や「食事が詰まる」といった、事故リスクも抱えています。

加え、自立している方の見守り、歩き出しの転倒リスク等にも配慮しなくてはなりません。

特別養護老人ホームの介護士の仕事内容

食事介助の事故

介護職員にも、「食事を食べさせなければならない」という強迫観念の様なモノが広まっている様に思います。
その原因は、「家族の要望」や「他職員の働き」に併せての事かもしれません。

利用者様は意思表示出来る方ばかりでなく、職員の判断が必要になります。

「無理して食べさせる」のも、傍から見ればおかしな話ですが…
食べる事で活力を取り戻す方もいますので、そこもまた判断を難しくしてるのでしょう。

相手を見て判断する余裕も、無くなってしまうのかもしれません。
職員も利用者も、穏やかに食事の時間を過ごせる様、何とか変わっていって欲しいものです。

看取り対応とユニットケアの課題

特別養護老人ホームは、終の棲家とも呼ばれ、看取り介護への対応も特徴。

看取りというのは、延命はせず、施設で最期を迎える事を支援するもの。
延命治療はせずとも、身体・精神的苦痛は出来るだけ取り除こうというケア。

施設の看取り介護とは?

終末期の方は、時間に縛られず「その人の状態」に応じた対応も必要。
その為には、人員や業務の余裕も必要になります。

また特養は、現在ユニット型の施設が主流です。
個別ケアの必要性が見直され、利用者様の生活スタイルを重視される様になりました。

介護施設のユニットケアを解説

…とはいえ、現実問題”仕事の流れ”は存在します。
職員がいなくては、その流れを崩す事は難しく、結局職員都合によるケアになってしまうのです。

もちろん、これらを達成するには職員のスキルアップも必須。
看取りやユニットケアの目的達成には、まだまだ課題が多く残されてます。

新卒採用や外国人の採用状況

職員確保手段として、新卒採用外国人労働者の受け入れ等もありますが…
どちらも実績は振るわない様です。

新卒者の採用実績は年々減少し、採用できていない施設も多くあります。

新卒者が集まらない理由

  • インターネットを通じた就職活動の一般化
  • 労働条件重視の傾向

これらに上手く適応できず、新卒者を集められていない様です。

私の知る施設でも、採用はほぼ中途採用が中心ですね。
福祉の専門学生等、介護を志す人はいるはずですが、上手くアピールする事が難しいようです。

未経験者

外国人の雇用については、56%が「検討していない」と答えてます。
他施設は何らかの形を検討してますが、実際に雇用している施設は20.4%。

日本人介護士の育成すら出来ない環境も多いので、妥当な数字かもしれません。
受け入れ形態としては、EPA技能実習といったものになります。

外国の方とは、私も一緒に働かせてもらう機会が何度かありました。
マイペースな方、勤勉な方、色々でしたね。

言葉に少し不自由してしまうのは仕方ないですが、他は私達とそう変わりません。

多くの施設では、即戦力を求めているでしょうし…、
育成に時間がかかるという懸念もあるかもしれません。

何にせよ、新人育成の余力も無く、定着させる事が出来てないのも問題です。
報告内でも、「職員育成に余裕のない状況こそ『人材の短期間での流出につながること』」と指摘。

良い介護施設を探すには?

問題ばかり述べましたが、実際に雇用改善の取り組みを成功させてる実例もあります。

介護業界にもホワイト企業が存在

特養に限らず、今後ますます、施設の”明暗”がはっきり分かれてくるでしょう。
労働者・利用者、どちらの立場にせよ、その見極めが重要になります。

職員の定着率に注目

他記事でも書かせてもらってますが、そこで重要になるのは職員の定着率
ここを見るだけでも、良い施設の指標になります。
老人ホームはどう探す?パンフレットや重要事項説明書の活用法

介護はマンパワーが重要です。
多くの場合、良いケアが実施出来る環境は、職員にとっても働きやすい環境。

職員の定着率を知るには、「重要事項説明書」という資料が役に立ちます。
ここには職種別に、勤続年数や常勤・非常勤の数などといったデータが細かく記載されています。
※契約時に必ず渡されるもの、資料請求なども可

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