特別養護老人ホームの介護士は、忙しいけどお給料が良いという話。
全体的な傾向としては、間違いありません。
少しでも収入を増やしたい介護士も多いでしょうし、嬉しい話ですね。
となると、気になるのは仕事内容。
キツイ、忙しいというイメージに不安な方もいる事でしょう。
特養での介護経験を活かし、特養介護士の給料や仕事内容を解説します。
特養介護士の平均給料
よく聞く、特別養護老人ホームは給料が良いという話。
実際は施設によりますが、全体的に特養は給料が高い傾向にあります。
厚生労働省による調査でも、「介護士の平均給与額より高い水準」でした。
特別養護老人ホーム 介護士の給料
※手当や処遇改善込み
- 令和4年度 特養月給34万(平均月給31万)
- 令和3年度 特養月給32万(平均月給30万)
上記は各種手当込みのデータなので、年収はそのまま単純計算で約400万円近く。
特養介護士は「常勤の給料平均が1番高い」
もう少し詳しく、他の介護施設と給料を比較してみます。
下記の図は、施設形態毎の介護士給与平均です。
令和4年度の介護士給与平均
※基本給(月額)+手当+一時金(1~12月支給金額の1/12)
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」より引用作成
特養介護士の給料は、R4年度で約月給34万円。
常勤介護士の給料は特養が1番高い結果となり、平均より約3万円高かったです。
ただしこれは「手当」「一時金」を含む調査結果。
詳細な金額を見るより、他施設と比べどうか?で読み解いた方が良いデータかと。
単純計算で、年収約350万円ぐらいになります。
ちなみにR4年度の介護士の平均月給は、常勤で約31万円。
しかし、こちらも「手当」「一時金」を含むデータ。
上記図にもありますが、基本給は月18万円ほど。
月の手取りにすれば約22万円ぐらいで、これは特養でも大きくは変わりません。
つまり、特養ではボーナスや処遇改善手当の多さが年収アップに繋がってるワケです。
賞与などの手当も、そこそこ貰えてました。
ボーナスと処遇改善について
特別養護老人ホームは、ボーナスの平均額も優れてます。
令和4年のデータでは、特養の平均賞与は798,580円。
※中央値では約78万円
賞与がある施設は85.4%という結果でした。
※参考:介護労働安定センター(令和4年度 介護労働実態調査結果について)
ただ上記は、他職種も含めた施設全体での結果です。
特養介護士の実際の賞与額は、平均よりちょっと高めとみるのが妥当ですね。
処遇改善の取得率も高い
また、給料に大きく関わる要素が「介護職員処遇改善加算」です。
国から支給される介護士の賃金アップの為のお金ですね。
職場改善に努め、要件を満たした施設が貰う事ができます。
※厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」より引用作成
こちらは厚生労働省の先調査より、処遇改善加算の届け出状況です。
特養では、99.3%の施設が何等かの加算を取得してます。
特定処遇改善加算の方も、取得率はトップでした。
処遇改善の面でも、特養介護士の収入が良い事が分かりますね。
ここで重要なのは、”加算取得率が他より良い”という点ですね。
夜勤手当てはいくら?
介護士の給料に大きく関わるのが夜勤手当。
特養は24時間体制の施設なので、もちろん夜勤があります。
夜勤の有無・回数は、介護士の給料に分かりやすく響きます。
夜勤手当は、施設や地域はもちろん、夜勤の拘束時間(8時間or16時間)でも違います。
基本的に、手当は長時間夜勤の方が高い傾向にあります。
シフトや公休の扱いにも差がありますので、詳しくは下記を参考下さい。
少しでも稼ぎたいと、夜勤を多く希望する男性介護士もいらっしゃいます。
特養で「給料の良い求人」を探すには?
特別養護老人ホームで、高収入の求人を選ぶポイントは下記。
- 基本給
- 賞与
- 資格・夜勤手当
特養では、賞与や処遇改善が高収入を実現するケースが多め。
基本給や夜勤手当含め、年収ベースで給与をみた転職活動を重視しましょう。
ただ「処遇改善加算」については、事前に全てを窺い知るのは難しいです。
処遇改善の額がはっきりせず、表記しにくかったとの事です。
…とはいえ、普通に表記している施設もあります。
給料が高い求人は、たいていの場合「処遇改善込み」での表記と思われます。
収入モデルを表記してる求人も多いので、参考にするとよいでしょう。
より「魅力的な求人」を選ぶ
忙しい特養では、人手不足による各自の負担が深刻です。
私が以前勤めてた職場も同様で、「応募が無い」のが理由でした。
「最初は良かったのに…」と退職するはめになるのも、介護職あるあるの1つ。
退職者が出るのは仕方ないですが、その時の人員の補充スピードも大切です。
待遇や働きやすさはもちろん、長く働けられる職場選びにも繋がります。
求人を探す際は、転職サイトなど情報量の多いサービスを中心に見てみましょう。
⇒おすすめ介護士向け転職サイト4選!使い方と非公開求人を解説
特別養護老人ホームの介護士の仕事内容
特別養護老人ホームにおける、介護士の仕事内容と役割を紹介します。
主な仕事内容は、利用者様の介助です。
食事や排泄、入浴など、日常生活の支援が中心です。
特養介護士の基本的な仕事内容
特養でも介護士の仕事内容は、他と大きく変わりません。
下記の3大介護と呼ばれる内容が基本となります。
- 食事
- 排泄
- 入浴
食事を食べたり、トイレに行く。
お風呂に入るといった、毎日の生活を支援します。
この他にも、レクリエーションなどの余暇活動も含まれます。
介護士は日常生活のケア、看護師は医療ケアを中心に行い、特に連携して業務をします。
食事の介助
介護度の高い方は、自分で食事が摂れない方も多くなります。
その為、特養ではやはり食事介助の量が多め。
嚥下の悪い方もいるので、小まめな観察や注意も必要。
実際の動きとしては、介助をしつつ、自立している方の見守りをするという形。
意思表示できない方も多く、時に介護士が食事終了の判断をせねばなりません。
様子を見て、無理をさせずぎないという選択も重要ですね。
またお薬の服薬介助も同時に行います。
血液や血圧、糖尿病等、大事な薬を飲まれてる方も多く、特に注意が必要な業務です。
排泄の介助
排泄介助は、トイレ誘導やオムツ交換などをします。
日中と夜間でオムツとパンツを使い分けている方も多く、夜間のみオムツという方も多いです。
トイレやベッドへの移乗介助も自然と多くなります。
食事と同様、残存能力を活かしつつも、無理をさせないという選択も重要です。
お尻に剥離などが出来てしまう方も多く、お薬を塗ったり等の処置も同時に行う事があります。
排便状況も確認し、看護師と共に処置や排便コントロールを行います。
入浴の介助
介護度の高い方は、一般のお風呂での入浴が難しいです。
そのため特養では、リフト浴やストレッチャー浴(機械浴)等の設備が充実。
ご本人の能力に合わせた入浴方法を選択し、安全に入浴を行います。
ズボンの上げ下ろしなど、1人での対応が難しい事も多く、衣類の着脱は2人での介助も多め。
看護師による身体観察や処置も、入浴時によく行われます。
多くの施設では、朝食後から昼食前までの午前中が入浴にあてられます。
仕事のスケジュールとシフト
特別養護老人ホームにおける、介護士の仕事スケジュールを見てみましょう。
介護職員のシフトは、基本的に【早番・日勤・遅番・夜勤】の形です。
細かい出勤時間は施設により異なります。
※夜勤は8時間勤務の場合もあり、下記は16時間の例です
上記は、利用者の基本的な生活スケジュールでもあります。
1日3食の食事と定時での排泄介助、入浴介助などが仕事内容。
朝には起床介助、夜には就寝介助が入ります。
空いた時間には、記録業務やお茶の準備など、色々な仕事があります。
またご本人の体調や様子に合わせ、ずれ込む事もあります。
特養の夜勤内容
仕事の内容は、様子確認の「巡視」と定時での排泄介助が主です。
利用者様が夕食を終え就寝された後は、この2つを定時に繰り返し行います。
⇒介護施設の「夜勤の仕事内容」を紹介 巡視や排泄はどうする?
認知症の方も多く、上手く意思疎通が出来ず、起き上がり時の転倒リスクを抱える方もいます。
その為、起き上がり時に職員が付き添えるよう、ベッドや足元にセンサーを使用する事もあります。
近年では、入眠状況を確認や改善の為、介護機器の導入も増えてきました。
勤務時間と職員体制
特別養護老人ホームの夜勤は、施設により「勤務時間」と「職員体制」が異なります。
具体的には、以下の様な違いがあります。
【職員体制】 ⇒ ・1人 ・2~3人
勤務時間については、施設によります。
8時間勤務ですと、2日にまたがるものの1日の勤務とみなされ、明けの日は公休扱いです。
16時間ですと2日勤務扱いとなり、夜勤手当もこちらの方が高い傾向にあります。
16時間の場合、起床や就寝、食事等の介助も担当します。
1人で少数名(ユニット)をみるか、複数人で施設全体(従来)をみるかの違いです。
オンコール体制について
特別養護老人ホームでは、看護師が配置されますが、夜間は介護士のみです。
その代わりオンコールという体制があり、看護師が交代で夜間の連絡対応をします。
転倒や熱発など、体調悪化や急変時に連絡し、指示を仰ぐ事が出来ます。
特養と他施設の仕事を比較すると
特養ならではの特徴として、利用者の介護度が高い点があります。
さらには認知症により、言葉で意思疎通が難しい利用者様も多いです。
身体介助や認知症対応が多く、忙しい職場ですね。
そのぶん、給料も高い傾向にあるという感じです。
⇒介護職が転職で高収入を得るには?
逆に、レクリエーション等の活動は、他より控えめ。
「レクが苦手」「身体介助メインに働きたい」という方にオススメです。
看取り対応について
施設で最期を穏やかに迎えられるよう支援する、看取り介護。
特養は「終の棲家」とも呼ばれ、看取りに対応した施設が多いのも特徴。
終末期であると診断された入居者様は、本人やご家族の同意があれば看取り対応が開始されます。
看取り対応中は、延命治療はせず、日常的な支援を中心に行います。
介護士の役割は大きく変わりませんが、ご家族様とのコミュニケーションやサポートも重要。
介助は「利用者様の様子をみて無理なく」と話しましたが、看取り介護では特にその意識が大切です。
特養介護士の仕事を経験して分かった事
実際に特養で働いた身としては、やはり大変なのは身体介助の多さ。
食事・排泄・入浴、とにかく介助を必要とする方が多いです。
認知症への対応力も問われますね。
ただそれらの能力を養える、というメリットもありますね。
特養は仕事がキツイ?
よく特養はキツイと言われますが、個人的にはそうとも限らないと思います。
認知症もなく自立した方が多い方が楽、という事でもありません。
それはそれで、コミュニケーションを始めとした仕事の難しさがあるのです。
「認知症の方とのコミュニケーションの方が良い」と考える介護士もいます。
同じ介護士でも、よく下記の様にタイプが分かれます。
- 身体介助が多い方が気が楽
- 高齢者とコミュニケーションを重視したい
忙しいのは事実ですが、その環境に働きやすさを感じる人がいるのもまた事実。
日常的なレクも少なく、その準備に労力を割く事もあまりないです。
施設設備が充実しており、他の専門職も多く配置されてます。
連携に苦労する事もありますが、彼らから教えられる知識も多くあります。
介護士にとって働きやすい環境と考える事も出来るでしょう。
介護資格は必要?
特別養護老人ホームは、介護士であれば無資格でも働く事が出来ます。
しかし現在では、無資格者は1年以内の資格取得が求められるようになりました。
募集要項を見ても、介護士は「初任者研修(取得見込み)」が条件の職場も出てきてます。
採用の幅を広げ、転職後の事を考えると、初任者研修は取っておきたいですね。
⇒介護職員初任者研修とは?
ご自身の待遇やスキルアップも考えると、将来的には介護福祉士の取得を目指したいです。
「ユニット型」「従来型」どちらが働きやすい?
どちらも経験しましたが、どちらも一長一短というのが本音です。
私自身はユニット型に慣れてしまいましたが、従来型の方が良いという声も多いです。
特に差が出るのは、夜勤での人数体制でしょうか。
ユニット型は、20人(2ユニット)を1人で対応します。
ユニット型は、1人でマイペースに仕事が出来るというメリットもあります。
業務効率でみるなら「従来型」
従来型の方が、介護者目線でみると業務効率で優れてます。
対応人数が多いぶん、職員も複数で当たれるので安心感もあるでしょう。
ただ従来型は対応人数が多いので、利用者様を覚えるのに苦労します。
利用者の変化もあるので、日々の情報把握も苦労があると思います。
仕事の面白さなら「ユニット型」
一方、仕事に面白さや成長、やりがいを求めるならユニット型をお勧めします。
充分なユニットケアを行ってる施設は少ないですが、利用者様に深いケアが出来ます。
個人の意見をチームにも反映しやすく、主体性も生まれます。
しかし夜勤のワンオペ体勢など、職場環境としては課題も多くあります。
介護士として確実に成長できるのは間違いないので、経験になるとは思います。
特別養護老人ホームに向いている人
特別養護老人ホームの介護士に向いてる人は、こんな人かと思います。
特養介護士に向いてる人
- 身体介助や認知症対応に関わりたい
- 介護士としてスキルアップしたい
- 少しでも多く稼ぎたい
男性介護士も多い施設なので、男女間のバランスが良く、働きやすいですね。
男性の方も気兼ねなく働く事が出来ますよ。
色んな介護施設で働きましたが、特養のケアは基本に忠実です。
独自の方法が染みついた施設も多いですが、特養はケア方法がしっかりしてます。
他の施設でも、自信を持って働けるようになりますよ。
もし「自分には難しそう」と思ったら、有料老人ホームも検討してはどうでしょう。
特養より利用者の自立度が高く、介助(仕事量)も少なめです。
未経験者にも働きやすいかと思います。
まとめ
今回は、「特別養護老人ホームの介護士の給料や仕事内容」をお伝えしました。
忙しい職場ではありますが、働きやすく感じる人がいるのも事実。
給料も、介護業界では高い傾向にあります。
介護未経験の方には、得るものが大きいと思いますよ。
介護業界は人手不足ですから、忙しい特養においては、特に慎重に転職活動しましょう。
雇用改善への意識や雰囲気など、職員定着率の良い施設を選びたいものですね。
コメント
友人が特養への転職を検討していたので、参考に紹介させていただきます!