大切な親や家族を預ける介護施設、少しでも良いところを選びたいですよね。
良い介護施設を選ぶ判断基準の1つとして、職員数が多い事があります。
当記事では、「良い介護施設の職員数」について現状と共に説明します。
良い介護施設に職員数が必要な理由、その為の施設選びのヒントをご紹介します。
介護施設の「職員配置基準」と「平均職員数」
介護施設の職員数を語るにあたり、やはり重要なのは介護職の人数です。
まずは介護施設の介護職の人員配置から説明します。
介護職の「人員配置基準」、「実際の平均職員数」を見ていきましょう。
介護施設の人員配置「3:1」とは
介護施設の人員配置では、よく「3:1」という言葉が出てきます。
これは「要介護・要支援2の利用者3名に対し、職員(介護士・看護師)を1名以上配置しなくてはならない」という意味です。
これは介護付き有料老人ホームや特定施設など、介護サービスを提供する施設が該当します。
住宅型施設では、外部の介護サービスを利用するため、特に規定は無いのが一般的。
常駐でなく、全職員の常勤換算での話ですね。
また入居施設の介護職員は、早番・日勤・遅番・夜勤といったシフト制で働きます。
入浴や食事など活動的になる日勤帯は職員が多め。
夜間帯は職員配置が薄くなるのが一般的です。
介護職員の職員配置例
実際の介護職員の配置について、より具体的に見ていきましょう。
下記は、グループホームやユニット型特養における1日の職員配置例です。
利用者数 | 10名 (特養等では夜間20名) |
---|---|
早番 (7:00~16:00) | 1名 |
日勤 (9:00~18:00) | 1~2名 |
遅番 (11:00~20:00) | 1名 |
夜勤 (16:00~翌10:00) | 1名 |
こちらは小規模施設での例になります。
介護付き有料などの大型施設では、1フロア当たりの利用者が40名程度になる事もあります。
その場合、早・遅・夜勤者は各2名ずつとなったりします。
逆であれば、職員は少なくなります。
介護職員の平均人数
厚生労働省によると、介護職員数は令和元年度で211万人。
将来的な必要数としては、2025年で約233万人、2025年では約243万人。
2040年度には約280万人と言われてます。
また同年の調査で「看護・介護職1人あたりの利用者は2人(2:1)」との結果も多くあります。
※参考「厚生労働省(第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について)」
及び「厚生労働省(令和元年度介護事業経営概況調査の概要)」より
1施設あたりの平均職員数も、介護労働安定センターの調査にあります。
入所施設にあたっては、平均52.6人でした。
※参考「介護労働安定センター(令和3年度 介護労働実態調査結果)」
ただ上記は、相談員やケアマネ、看護職員も含まれます。
介護職員の割合は「全体で46.7%」、「入所施設は68.8%」でした。
入居施設の場合は、約35人ぐらいという感じでしょうか。
介護職員が少ない施設の現状
介護職員が少ないのは、当然良くない事です。
サービスの質の低下、負担や事故リスクの増加。
それによる悪循環など、様々な悪影響があります。
「サービスの質低下」と「事故の増加」
下記はよく3大介護と呼ばれる代表的な身体介助です。
- 入浴介助
- 食事介助
- 排泄介助
人数がいても、最低限の介助ですら無理して行う施設も少なくありません。
そんな中で職員が減れば、まともなサービス提供が難しくなります。
例えば、「規定回数の入浴が出来ない」「じっくり食事介助を受けられない」等ですね。
また介護現場では介助中はもちろん、常に事故の可能性もあります。
職員が少ない状況では、危険に備えての見守りの目も少なくなります。
また忙しさで余裕がなくなると、焦りも生まれます。
職員不足による「負の連鎖」
職員が少ない状況では、当然1人あたりの負担も増します。
そうすると、心身への悪影響で退職する職員も増えます。
この悪循環が進み人手不足が深刻化すると、人員配置に穴が空く様になります。
- 夜勤者がいないので、同じ職員が連続で夜勤に入る
- 遅番がいないので、早番から遅番まで働く
- 日勤者がおらず、入浴介助ができない
こうなると出来る事は限られるし、下手すれば施設閉鎖の原因にもなり得ります。
介護現場は職員がいるように見えて、実際はギリギリな事がほとんど。
1~2人の退職でも、簡単にシフトが組めなくなってしまいます。
⇒シフトがきつい介護施設は要注意!組み方が下手、おかしい時の解決法
これが多くの介護施設の現状です。
食事や排泄、離床・臥床に追われ、余暇活動や爪切りの余裕すらない事も珍しくありません。
過酷な環境では職員もストレスが溜まり、それが態度に出てしまうケースもあります。
たとえ最低限のサービス提供が出来ても、利用者の心身への悪影響は無視できません。
介護はマンパワーが重要
「介護はマンパワー」と言いますが、現場にいると本当によく実感します。
職員が少ないと出来る事が限られます。
職員の方で何かしたいという思いがあっても、最低限の事しかする事が出来ないのです。
現状介護施設は、人材が「集まる施設」と「離れる施設」で2極化してるようにも見えます。
利用者・介護職員、双方にとって前者が良いのは言うまでもありません。
「職員にとって良い施設は、入居者にとっても良い施設」なんて言葉がありますが、環境の好循環にある施設で選びたいですね。
こんな現状だからこそ、介護施設の質にこだわり、厳しい目で選んでいただきたいです。
職員の数だけで施設のすべてを評価する事はできません。
しかし、良い介護施設の条件として「入居者に対しての職員数」は決して無視できない数値です。
職員数で良い介護施設を見分けるには?
それでは、「職員数が多い介護施設」はどう見分ければ良いのか。
職員数を知りたい時は、重要事項説明書を参考にしましょう。
その詳細と具体的な目安を考えていきます。
重要事項説明書で確認する
介護施設の職員数は、施設が発行する「重要事項説明書」で知ることが出来ます。
重要事項説明書とは、施設の具体的な情報を示す資料。
サービスや契約内容、運営元や建物など、施設情報が詳細に記されてます。
重要事項説明書は、施設の種類や都道府県等でフォームが異なります。
いずれにしても、施設の詳細情報が記載されています。
職員に関しては、下記の様なデータが職種別に確認できます。
- 職員数や勤続年数
- 常勤・非常勤などの「雇用形態」
- 保有資格
他には、入居者の男女別の数や平均年齢、入居率なども記載されてます。
利用料金の支払い方法や費用など、契約にあたり大事な事も書かれてるので注意。
勤続年数もチェック
職員データを見る時は、勤続年数や雇用形態もチェックしましょう。
職員の勤続年数が短い施設では、「人手不足⇒労働環境の悪化⇒離職」という悪循環に陥ってる可能性があり、質の良い介護サービスがない可能性が高め。
また雇用形態は、常勤(正社員)の割合が高い方が理想。
介護現場でも非常勤は、出勤・勤務時間を絞った働き方をする職員です。
パートや派遣を上手く使ってるケースもありますが、常勤が多い方が健全的です。
目安は「総職員数が入居者数の80%以上」?
良い介護施設には職員数が必須と話してきましたが、どれだけいれば十分なのか?
「高齢者施設ガイド」という本では、優良施設について下記記載がありました。
「(有料施設は)総職員数が入居者数の80%以上」という共通点が見つかった。
参考:安心・快適 高齢者施設ガイド2019(日本経済新聞出版社)より
総職員とは、介護職以外にも事務や掃除などを含めた、すべての職員の数との事です。
介護を支える職員は介護士だけではありません。
ケアマネや看護師はもちろん、事務員や掃除職員も施設サービスを支える大切な人材です。
だからこそ、「優良」と言えるのかもしれません。
これは1つの評価に過ぎず、これが全てとは言いません。
妥協しないのなら、1つの評価基準としてみてもよいでしょう。
全国の質の高い介護施設を厳選し紹介しています。
満足できる施設の探し方についても書かれているので、参考までに。
施設情報サイトでも、介護施設の検索や相談ができるので活用しましょう。
施設見学にも必ず行く
良い介護施設を見つけたら、必ず施設見学にも行きましょう。
施設へ電話連絡などをして、予約を取り付けることが出来ます。
どうしても資料で分かる事には限界があるので、実際に自分の目で確かめる事が大切です。
可能であれば、本人や・家族と一緒に見に行くことをオススメします。
⇒施設見学の申し込み方と見るべきポイント
職員配置3:1は適正?
最後に、「職員配置3:1が適正か?」を考えてみます。
例えば利用者数45名だとして、介護・看護職員が15名。
看護2名、介護13名で考えてみましょう。
- 1日に必要な職員数は【夜勤の入明計4人、早・遅各1人、日勤3人】とする
⇒”1日9名×30日”で、1カ月に270人分の配置が必要 - 職員の公休は9日、13人×21日で273名分
- 273-270=3日分の猶予のみ
これを1フロアとして、夜勤2人、早・遅1人、日勤3名でギリギリ回せます。
ちなみに看護職員2名は厳しいラインなので、3名は欲しいですね。
実際はかなりキツイ
結論からして、だいぶキツイ。
調査で多くのが「2:1」となってたのも、納得の結果です。
先例の人数なら、介護職員も「早・遅番も2人ずつ」は欲しいですね。
食後の服薬介助も、多分終わりません。
現場を知る身としては、事故リスクは常にあると思います。
職員の多い日中も、排泄や水分提供の他、入浴やシーツ交換など仕事量が多く厳しい。
「3:1」は介護サービスを提供する施設の基準としては、不適当に思いますね。
「人員配置 4:1」の議論も
気になる話で、一部で職員配置「4:1」の議論があったとありました。
私も軽く内容を見ただけですが、IT機器やセンサーやカメラの導入など、先進的な取り組みで人員削減ができるという事でしょうか?
※参考「高齢者住宅新聞(人員配置基準4対1、議論深めていく必要)」
個人的な話ですが、IT機器の導入が進んだ施設での勤務経験があります。
その経験から言うと、4:1は無理があると思いますね。
- その場で状態が分かる、ベッドセンサーやカメラ
- 事務作業を楽にする介護ソフト、タブレット類
これらがあっても仕事は無くなりませんし、センサー反応に対応するのも職員です。
誰も転倒の危険があるのに、センサーが鳴りっぱなしな事もよくあります。
センサーによる完璧な把握も難しく、状態の不一致もあります。
タブレット等の機器も、上手く適応できない職員もいます。
それに高齢者は、介助以外でも人を必要とします。
「話や分からない事を聞いてほしい」「安心できる言葉が欲しい」など…。
認知症対応なども含め、見守りや対話に多くの時間を必要とします。
ただ効率化や生産性の上昇は、今後も積極的に考えるべき課題です。
上手く時間を作り出し、余裕やサービスの質向上に繋げていきたいですね。
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