認知症は、介護度の判定に深く関わりがあります。
正しい結果を得るためにも、きちんと理解し、調査で伝えられるようにしたいですね。
認知症高齢者の日常生活自立度という指標があり、認定調査にも活用されています。
これは認知症の方が、「どれだけ上手く生活できるか、介護が必要か」という内容です。
認定調査での対応、介護度の理解にお役立てください。
要介護度と認知症の関係
認知症の有無や状態等は、要介護度の決定に関わります。
介護度は、その人に必要な介護の量や時間などで決定されます。
その中には、下記の様な「認知症による理解の難しさ」なども考慮されます。
- 自分で服薬管理が出来ない
- 食事や排泄など、動作の指示が通らない
- 認知症による危険行為がある
例えば「指示が上手く入らない」といった事も、介護にかかる時間として考えられます。
認定調査時の調査項目には、「認知機能」や「精神・行動障害」、「社会への適応」等があります。
食事や排泄の状況と共に、認知症の状況やそれによる生活支障も判断基準となります。
要介護認定調査は、まず機械による1次判定で介助時間を推計し結果が出ます。
その判定項目にも、「BPSD(認知症症状)」が含まれます。
認知症による意思疎通の難しさなども、介助時間に考慮されるという事ですね。
さらに介護認定の結果には、要介護と要支援があります。
認知症がある場合、要介護者となる事が多く、要支援者として支援を受ける事が難しい傾向です。
認知症の症状があると、予防サービスの理解が難しいと判断される事が多くなります。
認知症高齢者の日常生活自立度とは
要介護度に関わる要素として、「認知症高齢者の日常生活自立度」という指標があります。
これは「認知症度(レベル)」とも呼ばれ、認知症による症状の程度と頻度を表すものです。
後者ほど、自立度が低く症状が重いと判断されます。
どの段階に属するかは、「認定調査時の調査員」「主治医の意見書」より判定されます。
認知症が無い場合は、”自立”という事になります。
日常生活自立度別の判定基準と症状
以下が、「認知症高齢者の日常生活自立度」の判断基準です。
ランク | 判断基準 |
---|---|
Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立してる |
Ⅱa Ⅱb | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、 誰かが注意していれば自立できる。 家庭外で上記状態が見られる場合は「Ⅱa」 |
Ⅲa Ⅲb | 日常生活に支障を来すような症状・行動、意志疎通の困難さがときどき見られ、 介護を必要とする。 日中を中心に上記状態が見られる場合「Ⅲa」 |
Ⅳ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、 常に介護を必要とする |
M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、 専門医療を必要とする。 |
参考:厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度」より
次項からは、各ランクごとに詳細をみていきます。
日常生活自立度Ⅰ
軽いもの忘れなどがあるものの、ほぼ自立した生活が送れる状態です。
家族などの生活支援があれば、日常生活で困る事はないでしょう。
症状の悪化防止の為、予防に努める必要があります。
日常生活自立度Ⅱ(a・b)
日常生活に支障のある症状や行動、意思疎通の難しさが多少あっても、”誰かの注意や支援があれば自立が可能”な状態です。
在宅生活も十分可能ですが、1人暮らしには不安が残ります。
家族やサービスによる支援や見守りの目が必要ですね。
家庭内でも見られる場合は、Ⅱbというランク付けがされます。
何故このような分け方をするのかというと…、
認知症の方にとって、より適応が難しいのが、外出先など不慣れな環境です。
家庭内の慣れた環境だと、今までの生活習慣に基づいた行動がしやすいですよね。
慣れた環境でも日常生活に支障があるという事は、それだけ認知症が進行していると判断されます。
- Ⅱa
- 道に迷う事が多い
- 買い物や金銭管理が出来ない
- Ⅱb
- 服薬管理が出来ない
- 来客や電話対応が出来ない
日常生活自立度Ⅲ(a・b)
認知症による生活への支障、意思疎通の難しさが時々見られ、介護を必要とする状態です。
食事や排泄が上手くできないなど、生活への支障程度もⅡより悪化しています。
より身近な基本行動への支障がみられ、徘徊や大声、不潔行為など、問題行動がでる事があります。
在宅生活も難しくなる状態ですね。
夜間中心の場合をⅢbとしています。
特にⅢbの夜間を中心として症状が出る場合、昼夜逆転の傾向にあります。
介護者の負担増加や、本人のADL(日常生活動作)の低下。
体調・介護負担のさらなる悪化が懸念されます。
- 【症状・行動例】
- 食事・着替え等の基本動作が上手くできない・時間がかかる
- 奇声や徘徊、物を拾い集めるなど
日常生活自立度Ⅳ
認知症による生活への支障、意思疎通の難しさが頻繁にある状態で、常に介護を必要とします。
自立度Ⅲにある症状や行動の頻度が多くなります。
目を離せない時間が多く、在宅生活は非常に難しい段階です。
日常生活自立度M
「M」は他のランク付けと異なり、精神疾患に起因する問題行動が認められる状態です。
せん妄や妄想、暴力や自傷などが見られる場合に適用されるランクですね。
専門の医療機関を受診し、専門医による治療が必要です。
高齢者は、脱水などの身体症状、薬の影響に原因がある事が多いようです。
「M」は認知症の程度に関係なく適用され、他ランクの高齢者でも、症状が認められた場合はMとされます。その逆もあり、治療により改善すれば、元のランクに戻る事もあります。
認知症のランクの中でも、特殊な位置づけですね。
認定調査で認知症を正しく伝える方法
要介護度を決める「要介護認定」、調査では認知症についてどう伝えるべきでしょう。
正しい判定結果を得るためには、短い時間で現状を的確に伝える必要があります。
認知症の方でも、訪問調査員の前では、普段よりしっかり対応が出来るケースもあります。
調査時には家族が付き添い、普段の様子について正しい情報を伝えなければなりません。
⇒「介護認定調査をやり直したい」正しい結果を得る調査時の対応
「認知症高齢者の日常生活自立度」では、認知症による生活支障について以下をみています。
参考にすると、より的確に状態を伝える事に役立ちます。
- 時間(いつ)
- 生活場面(どこで)
- 頻度(どのぐらい)
認知症により、“いつ、どこで、どのぐらい”困っているのか、よく整理しておきましょう。
それにより、どれほど介護が必要になっているかも重要なポイントですね。
問題行動等、特別困っている事も忘れず伝えておきましょう。
介護施設の利用を検討する場合、認知症に対応している施設を選ぶ必要があります。
例えば、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホームなど。
施設情報検索サイトでは、資料請求や相談の他、施設見学の予約も出来ます。
老人ホーム選びに活用して下さい。
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