今回は「終末期ケア専門士」という資格を解説します。
当資格は2020年に「一般社団法人 日本終末期ケア協会」が新設した資格。
多死社会において重要な役割を持つ、医療や介護等の専門職を対象とした資格です。
記事の内容
- 終末期ケア専門士の概要(受験資格や更新制度)
- 試験情報(受験方法や試験内容、試験勉強方法)
- 資格取得のメリット・デメリット考察
- 関連学習情報
終末期ケア専門士の受験には、国家資格等や実務経験が必要です。
取得メリットや試験情報等をまとめたのでご参考下さい。
終末期ケア専門士とは
終末期ケア専門士は、終末期や臨床ケアにおけるスペシャリストを示す資格です。
科学的根拠(エビデンス)に基づいたケアを実践する知識、根拠や答えが明確でなく解決が難しいケースに遭遇した時の倫理観などを養うことを目指します。
終末期ケアは、医療や介護・福祉など、多職種による連携が必要です。
当資格は職種を限定せず、終末期に関わる多くの職種に向けた資格でもあります。
認定は「日本終末期ケア協会(JTCA)」が行います。
まず簡単に紹介すると、下記の特徴があります。
終末期ケア専門士の特徴
- 医療や介護・福祉など、幅広い職種が受験可能
※要実務経験(2~3年) - 上級資格へのステップアップ制度
- 更新制度
順を追ってご紹介します。
終末期ケア専門士の受験資格
終末期ケア専門士の受験資格は、下記の実務経験があれば満たす事が出来ます。
実務経験2年以上 | 医師、歯科医師、看護師、保健師、薬剤師 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 臨床工学技士、歯科衛生士、管理栄養士 介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士 臨床検査技師、放射線技師、介護福祉士 |
実務経験3年以上 | 栄養士、准看護師、介護士(要実務者研修) |
保有資格により、必要な実務経験が異なります。
准看護師や実務者研修は、実務経験3年が必要です。
さらに受験時には、それぞれの実務経験証明書が必要です。
※証明書は、申し込み後に送付される
経験年数は「資格取得日から書類提出日まで」、雇用形態は「常勤」「非常勤」どちらでも可。
終末期ケア専門士のステップアップ制度
終末期ケア専門士には上級資格があり、下記の形でステップアップが可能です
- 終末期ケア専門士
- 上級終末期ケア専門士
- JTCAアドバンスインストラクター
資格は全3種類、資格により終末期ケアへの関わり方が異なります。
「実践する人」から「チームやケアを育てる人」となり、やがては地域に「伝える人」を目指します。
まだ詳細不明な点もありますが、終末期ケア専門士取得2年後に上級が取得可能になるとの事。
上級終末期ケア専門士
上級終末期ケア専門士は、より幅広い知識を学び、チームマネジメントや教育等の分野も学習。
多職種における終末期ケアのチームリーダー的役割を期待されます。
JTCAアドバンスインストラクター
当資格の最上位とも言えるのが、JTCAアドバンスインストラクター。
地域に根差した専門アドバイザーとして、より幅広い活動が可能になります。
また協会(JTCA)に届いた、アドバンスインストラクター宛の仕事依頼も受ける事ができ、内容に応じ希望の業務に参加する事が出来ます。※協会から直接仕事依頼がある事も
さらに協会には「コアメンバー」と呼ぶ、学習プログラムなどについて企画・運営する人がおり、コアメンバーに昇格する事も可能です
※その条件等、詳細はまだ不明
資格の更新制度
終末期ケア専門士は、3年毎の更新が必要です。
更新料は5,000円、加え動画配信等による単位取得も必要になります。
単位取得には、資格認定登録者のみ利用できる「専用動画配信システム(月額500円)」を使用。
「動画視聴・WEBセミナー・WEBカンファレンスへの参加」で資格更新に必要な単位を取得します。
他の更新制資格と比べ、かなり優しい仕様ですね
終末期ケア専門士の試験と対策
終末期ケア専門士の試験や対策情報について解説します。
受験申込方法と試験日程
受験申込から合格までは、下記の流れとなってます。
合格時には、認定登録料として10,000円が必要です。
※受験料とは別
試験は、CBT試験と呼ばれるパソコン試験(詳しくは後述)。
全国270ヵ所の会場で受ける事が出来ます。
受験申込や試験日程の目安は、下記の様になっています。
受験申込と試験日の目安
- 受験申込:4月~9月
- 試験日:11月中旬
- 合格通知:12月下旬
これは2020年の予定を参考に書きだした内容です。
受験の際は、公式ホームページ(JTCA)も確認して下さい。
合格通知は、12月下旬を予定。
試験方法や出題範囲
終末期ケア専門士の試験内容はこちらです。
試験方式 | CBT(パソコン)試験 |
---|---|
出題数 | 90問 |
出題範囲 | 「終末期ケア専門士 協会認定テキスト」と「時事問題」より |
試験時間 | 90分 |
受験料 | 10,000円 |
合格基準等は、現在のところ不明。
下記はテキストの目次より抜粋、この様な内容が出題されます。
出題内容の参考情報(公式テキスト目次より)
- 終末期におけるチームケア
- 日常生活を支えるケア
- 身体症状とそのケア
- 意思決定支援
- スピリチュアルケア
- グリーフケア
- 看取り期のケア
- 終末期を取り巻く社会資源
- 疾患別終末期ケア
試験方式は、パソコンによる「CBT試験」です。
CBT試験とは、会場に赴きパソコンを使う試験方法です。
※在宅受験は不可
選択式問題はクリック、記述式の場合はキーボード操作で回答します。
恐らく「選択問題」が中心と思われます
試験勉強や難易度について
試験対策には、まず「終末期ケア専門士 協会認定テキスト」を入手しましょう。
公式サイトから、試し読みも可能ですよ。
Amazonでも取り扱いがあります。
上級終末期ケア専門士のテキストも、販売開始されました。
終末期ケア専門士の難易度・合格率
第一回試験の合格状況も発表されてます。
受験者2,310人対し、合格者は1,516人。
合格率は65.6%という結果でした。
実務経験が必要という、受験までの敷居。
90問と出題数も多い事から、そこそこの難易度がある資格ですね。
合格ラインは不明ですが、しっかりした勉強が必要な試験とみて良いでしょう。
需要もある内容ですので、ぜひ上級資格まで取得したいですね。
終末期ケア専門士のメリットとデメリット
ここからは終末期ケア専門士の有用性を考察します。
当資格は、現時点(当記事執筆時)でまだ認定開始前であり、その有用性は不明です。
メリットとデメリットを語るなら、以下の点がポイントになると思います。
終末期ケア専門士の有用性の判断ポイント
- 終末期ケアを学ぶ有用性
- 上位資格が直接仕事の獲得に繋がる可能性
- 資格の更新制度
資格取得メリット
新しい資格で認知度も低いであろう事から、各職種の主要資格には評価は劣ると思われます。
ただ終末期ケアを学ぶ事自体は、非常に価値がありメリットです。
この高齢化社会で医療や福祉職として働くなら、終末期や看取りに関わる事は避けられません。
介護や医療現場においては、特にそれら知識を求められます。
前向きな見方をすると、「終末期ケアを積極的に学んだ姿勢」への評価も期待出来るかもしれません。
病院等での臨床ケア、介護施設での看取りケアにおいて特に有用な内容と思います。
仕事獲得に繋がる可能性も
またJTCAアドバンスインストラクターになると、仕事の依頼を受けられるようになり、協会の活動にも関われる可能性があります。
これが実現すれば、仕事の獲得や活動の幅を広げる事に繋がりますね。
報酬を得る事も可能との事です。
協会の認知度が高まり活動も活発になれば、なかなか面白い資格になるかもしれません。
資格デメリット
取得後にデメリットがある資格はほぼ無いですが、更新制の資格は別です。
継続的な学習活動、3年毎に更新料5,000円が必要になります。
ただこの手の資格としては、かなり優しい仕様です。
※他資格だと、単位取得のためセミナー会場に赴く必要があるケースもある
動画サービスは保有者限定ですので、学習環境が生まれるメリットがあるとも見れますね
ただ学習活動が必要な事には変わりませんので、学習意欲の高い人向けの資格でしょう。
資格評価より知識習得が目的の場合、代替手段もでてきてしまいます。
「更新維持に値するメリットを見出せるか」がポイントですね
その他「終末期・看取りケアの学習情報」
当資格に興味がある方へ、終末期・看取りケア関連の学習情報を紹介します。
主に他資格や書籍等がメインになります。
看取りや終末期に関わる資格
看取りケアを学べる資格に「看取りケアパートナー」があります。
学習目的の意味が強い資格ですが、誰でも取れて更新制度もありません。
ユーキャンの通信講座なので、学習から試験まで全て在宅で可能です。
また介護士などであれば、実務者研修や介護福祉士も欲しい資格です。
※終末期ケア専門士の受験資格に該当しますね。
実務者は介護福祉士取得に必須ですし、介護福祉士は国家資格です。
介護士としての評価も受けられる資格ですので、取得をご検討ください。
少し意味合いが変わりますが、人生の最期に関わる資格に終活アドバイザーも挙げられます。
こちらはケアというより、「エンディングノート」や「相続手続き等のサポート」の為の資格。
相談援助業務に就かれてる方に有用です。
看取りケアの学習書籍など
続いて看取りケアの学習に役立つ関連書籍、当サイトの関連記事を紹介します。
私自身が介護職の為、介護関係者向けの内容が多くなります。
はじめてでも怖くない 自然死の看取りケア
介護施設における看取りケアを、職員・家族双方の視点で解説。
苦痛を取り除き穏やかに最期を迎えるため、大切な知識・考え方が学べます
「これ」だけは知っておきたい高齢者ケアにおける命を守る知識と技術
高齢者に関わるうえで知りたい基本的な医療知識を学べます。
説明が分かりやすく具体的な為、専門職でなくとも理解しやすい内容です。
写真でわかる拘縮ケア
「寝たきり」や「重度」と呼ばれる方は、拘縮が強かったり自身で動く事が出来ない事が多いです。
そうした方達が安楽に過ごせる為の姿勢(ポジショニング等)を学べます。
その他関連記事
最後に、当サイト内でお役に立てそうな記事も紹介します。
ご参考までに。
コメント