高齢者介護において、よく問題になるのが段差の存在。
特に在宅介護となると、移動の際に家の段差がネックになります。
急に車椅子での外出が必要になり、「玄関の段差が乗り越えられない」と焦ったり…。
当記事では、携帯スロープを使った家の段差解消を中心に紹介。
工事や自宅改修を考える前に、1つ検討してみて下さい。
「車椅子と家の段差」をテーマに情報をお届けします。
介護目的で「スロープで家の段差解消」する方法
スロープとは、坂・勾配といった事を指します。
要するに、坂道を作って段差解消をするというのが今回のテーマです。
スロープを作って家の段差を解消するには、主に下記2つの方法があります。
- 後付けできる「車椅子用の携帯スロープ」を使用
- 住宅改修
工事不要で後付できる「携帯スロープ」。
もしくは、「住宅改修でスロープを作る」方法ですね。
それぞれどんなモノか見てみましょう。
「車椅子用の携帯スロープ」で段差解消
介護用品の中には、携帯用のスロープがあります。
主に車椅子での移動を目的とし、工事不要で後付して使用します。
家の段差でよく困るのが、玄関の履き替え口の様な大きな段差。
これを車椅子で降りるには、例えば下記の様な大きめの携帯用スロープが使用できます。
この商品は段差の上と下を繋ぎ、勾配を作る事が出来ます。
- 玄関の段差
- 屋外玄関先の段差
こうした段差の解消には、大きめのスロープが便利です。
携帯用なので持ち運びも可、大きめなので「玄関」や「屋外」での使用に適してます。
屋内の小さな段差解消には「ミニスロープ」「段差マット」
屋内にある小さな段差であれば、ミニスロープやフラットレールで対応できます。
ミニスロープは、より小さい段差に使える商品ですね。
高さを細かくチェックし、適した大きさの商品を選ぶ事でスペース確保に繋がります。
こちらは「屋内用スロープ」の1つ。
屋内用スロープや段差マット等で調べると、小さめの商品を見つけやすいです。
段差を撤去し、撤去部にフラットレールを敷く事で解消します。
住宅改修でスロープを設置する
続いては、住宅改修でスロープを設置する方法です。
主な場所としては、主に玄関周辺ですね。
玄関内の段差、屋外の階段などにスロープを設置する事例が多いです。
ここで「スロープ勾配の適切な角度」の話を少し。
バリアフリー法建築物移動等円滑化誘導基準では、スロープ勾配は屋内で1/12以下。
屋外では1/15以下と定められています。
角度にして「1/12が約4.8度」、「1/15で約3.8度」です。
※参考「国土交通省(建築物移動等円滑化誘導基準チェックリスト )」
せっかくのスロープも、勾配が急だと事故やケガの原因になります。
例えば、急な坂道を車椅子で移動する事を想像すると分かりやすいでしょう。
車椅子利用者や高齢者にとって、私達の想像以上に段差や坂道は危険です。
住宅改修によるスロープ設置費用
住宅改修でスロープを設置した場合、費用はいくらぐらいか簡単に調べてみました。
ホームプロさんの事例紹介を見てみると、玄関外では100万円前後。
玄関内では約30万円ほどの施工例がみられました。
ホームプロは、リフォーム会社の紹介や見積もり比較が受けられるサービスです。
リフォーム事例も見られるので、活用してみて下さい。
スロープと介護保険
携帯用スロープは介護保険において福祉用具貸与に該当、レンタルの対象となってます。
「段差解消のためのものであって、取り付けに際し工事を伴わないもの」に限り、要支援1~2の方から、利用する事が出来ます。
また住宅改修でのスロープ設置は、介護保険では居宅介護住宅改修費の支給対象となります。
これは要介護認定を受け、介護保険被保険者証に記載されてる住所の家屋が対象。
20万円を限度に、その9割~7割が支給されます。
「車椅子用の携帯スロープ」の注意点と選び方
車椅子用の携帯スロープの使い方について、もう少し解説します。
使用時の勾配角度、スロープの種類など、細かい点をお話しします。
スロープ使用時の注意点
車椅子の使用には、スロープは大変便利ですが注意点もあります。
「坂道を作る、通過する」必要があるため、場合によっては使いにくい可能性もあります。
- 曲がりながらは超えにくい
- 勾配が急になると、負担が危険がある
- 大きな段差の解消にはスペースが必要となる
まず高い段差を解消するには、スペースが必要です。
狭い場所で解消しようとすると、勾配が急になり危険があります。
また商品特性上、曲がりながら登る事は難しいです。
こういったデメリットも理解し、注意して使用しましょう。
使用が難しい場合は自宅改修など、別の段差解消方法が必要かもしれません。
車椅子用携帯スロープの選び方
先述の通り、スロープ使用の際には勾配の角度が重要です。
車椅子用のスロープを使う際には、段差の高さとスロープの長さを確認しましょう。
段差の高さに対しスロープが長いほど、勾配が緩やかになります。
下記は、段差に対するスロープの長さ目安になります。
介助で押す | 段差の6倍~8倍の長さ ※1/6~1/8 |
---|---|
自分で動く | 段差の12倍~16倍の長さ ※1/12~1/16 |
段差の12倍の長さで傾斜角度は約5度。
高齢者でも自走できる角度は、このぐらいからが目安です。
特に急な坂道を下る時は、前から落ちないよう介助でバックで降りると安全です。
車椅子用携帯スロープの種類
屋外用の携帯スロープには、下記2種類があります。
- 1枚型スロープ
- 2枚型スロープ
1枚型は標準的なモノで、自走でも介助でも使用しやすいです。
2枚型は車輪に合わせ、2枚の細い勾配を設置します。
軽量で携帯しやすいですが、車輪分ほどの幅しかなく使用しにくいのがデメリット。
もし自宅用のみに使うのであれば、1枚型がオススメです。
車椅子での段差介助方法
小さい段差であれば、車椅子でも介助があれば乗り越えられます。
車椅子介助で段差を乗り越えるには、下記手順で行います
- ティッピングレバーを踏み、前輪(キャスター)を上げる
- 前輪を段差の上に乗せる
- 後輪を押すか持ち上げるかし、段差を上る
車椅子の後輪付近には、足で踏める位置にティッピングレバーがあります。
これを踏みながらキャスターを上げると、テコの力で持ち上げやすくなりますよ。
車椅子で段差を登る際は、車輪が大きい方が楽に登れるのでこの方法を使用します。
後輪の半径以下なら登りやすく、それ以上は超えにくくなります。
また段差介助の際は、要介護者が転落しないよう注意。
段差を上る際はゆっくりと行い、要介護者にはアームレスト等をしっかり握ってもらって下さい。
スロープを上る際も、介助者が後ろから車椅子を押して介助した方が安全です。
前を向いてしまうと、前傾姿勢になってしまい転落に繋がります。
スロープ以外で家の段差を解消したい
段差解消にはスロープが便利ですが、それでは解決が難しい。
あるいは他の方法の方が適してる事もあります。
家の中で言うと、下記場所ですね。
- 玄関や縁側
- 階段
- お風呂場
これら場所におけるスロープ以外の段差解消方法も紹介します。
玄関の段差を解消する
玄関内の段差解消には、手すりや踏み台の設置が有効です。
工事不要であれば、置き型手すりや踏み台。
住宅改修であれば、壁や支柱てすり、あがり框手すり等が有効です。
住宅改修での手すり設置も、数万円~で可能。
「歩けるけど段差に困ってる」なんて時は、検討してみて下さい。

車椅子で階段を移動したい
家の中で最も段差が多い場所は、階段です。
なるべく使用を避けたい場所ですが、どうしても使用が必要な事もあるかもしれません。
その場合は段差解消が難しいので、別手段が必要になります。
今回は車椅子もテーマの1つですので、車椅子での階段移動方法を紹介します。
もし階段を車椅子使用者が上り下りするなら、下記方法があります。
- リフトイス型の階段昇降機
- 階段用の車椅子
リフト型の階段昇降機は、レールを階段に設置し、そこを椅子に座って移動します。
工事費用は掛かりますが、ホームエレベーターよりは設置しやすいです。
他には「階段移動用の車椅子」というのもあり、主に移動介助で使用します。
細かな使い方や機能は、その商品により異なります。
ポピュラーなのは、下記の様なクローラー式の電動車いすですね。
後部のキャタピラをボタン操作し、階段を移動できます。
途中で止まっても滑り落ちず、場所を選ばず使用可能。
従来の車イスと比べ非常に高価ですが、リフト設置等よりは費用は安く抑えられます。
お風呂場の段差解消方法
お風呂場の床が低く、段差が発生してる時は「浴室すのこ」が便利です。
- 入り口と浴室の段差解消
- 床を高くし、浴槽に入りやすくする
- 床の一部に段差がある
すのこを使えば、お風呂場のこんな悩みを解消できます。
車椅子での出入りもしやすくする事が可能です。
使いやすい大きさに加工して使えます。
詳しい使い方は、下記記事を参考下さい。
解決が難しい時は「住宅改修」も考える
今回は、「家の段差をスロープで解消する方法」を中心にお伝えしました。
とても便利な物ですが、家の屋内外全てを携帯スロープだけでフォローは出来ません。
また高齢者になると、在宅生活を続けるうえで様々な問題が出てきます。
車椅子や段差だけでなく、様々な危険が目に見えてくるでしょう。
場合によっては、自宅改修が必要な事も出てくる事と思います。
また複数の事業者から見積もりを取り、比較する事も重要です。
参考の1つとして、リフォーム会社の紹介サービスというモノがあります。
地域や内容に対応した会社を比較相談し、調べる事が出来ます。
下記なら「高齢者介護」や「バリアフリー」の事例も見れ、イメージも付きやすいかと。
また車椅子とは離れますが、家ではトイレやお風呂も危険の多い場所です。
特にお風呂は浴槽を跨ぐ時など、段差に悩まされる場面ですね。
それらの問題には、別記事で触れてますので良かったら。
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