どこの職場でも、新人職員は慣れない環境に戸惑うもの。
そんな新人職員の不安を払拭する為に、プリセプター制度という教育方法があります。
これは「先輩職員がマンツーマンで、専属指導してくれる」という制度。
今回は、「介護現場でのプリセプター制度」をテーマに解説します。
- 介護プリセプター制度の内容・目的
- 新人教育の具体的な流れ
- プリセプター制度のメリットとデメリット
以前プリセプター制度で指導に関わった経験もあり、具体的な話をお伝えできると思います。
この制度では、仕事から人間関係まで、職場に馴染めるよう先輩がサポートします。
新しい環境への不安・心配がある方も、安心して働く事ができますよ。
介護プリセプター制度とは
プリセプター制度とは、新人に対し固定の職員を付け指導する制度です。
指導側の先輩を「プリセプター」。
新人職員を「プリセプティー」と呼びます。
「エルダー制度」「チューター制度」などの呼び方もあります。
OJTによるマンツーマンで指導
既述の通り、プリセプター制度では新人に付く職員が決まってます。
具体的には、常に同じ日・出勤時間で一緒に働く事になります。
もちろんシフト内容も同じです。
指導者となるプリセプターは、主に下記の役割を担います。
- 業務指導
- 不安や疑問などの相談役
- チェック表による定期的な「振り返り」と「課題発見」
仕事内容だけでなく、メンタルケアも行うのが特徴ですね。
新人が職場に馴染むため、あらゆる面でのサポートを行います。
具体的には後述しますが、指導内容の振り返りも一緒にします。
自分の能力や課題を明確にし、より適切な指導を受けられるメリットもあります。
プリセプター制度の目的
多くの介護現場では、職員毎でシフトの内容がバラバラです。
その為、その日によって指導者も異なり不明確。
下記問題もよく発生します。
- 先輩によって教え方が違う
- 指導者が明確でなく、放置されてしまう
- 誰に何を教わるか不明で、何をすれば良いか分からない
こうした問題を解決し、新人職員の早期離職を防ぎ、定着を促すのが主な目的です。
また指導職員の成長を促す目的もあり、リーダー等がフォローに入る事も。
どんな人がプリセプターになる?
プリセプターは、基本的にリーダー等から指名される事が多めです。
総合的なサポートもある為、その際には仕事能力だけでなく人格も求められます。
「この人に教われば大丈夫」と、信頼された中堅職員という感じですね。
※保有資格で言うと、介護福祉士が目安
『業務経験が「3~5年」の職員を配置するところが多い』との情報もあります。
※参考:福島県社会福祉協議会(介護プリセプター制度導入の意義と仕組みづくり)より
ただ先輩職員の成長も兼ね、2年目程度の職員を付ける職場もあります。
管理者等の考えにより、異なる部分ですね。
介護プリセプター制度での新人教育の流れ
それでは、プリセプター制度における教育の流れを確認します。
- 介護における新人指導の流れ
- 評価シートや目標設定
- 教育期間などの目安
プリセプター制度では、評価シートや目標設定などの要素もあります。
指導の期間は、「入職後から独り立ちまで」が目安。
ただ独り立ちとはいっても、どこをゴールとするかは職場により異なります。
経験に基づき、一般的な内容をお伝えします。
新人指導の基本的な流れ
プリセプター制度においても、独り立ちまでの大まかな流れは同じです。
- 基本的な職場ルールを理解する
- 日勤帯の業務習得(基本的な利用者対応)
- 夜勤帯の業務習得
基本的には、働きながらのOJTによる指導が中心です。
まずは職場の基本的な説明を受け、利用者対応を少しずつ学んでいきます。
日中の基本業務を十分に覚えたら、夜勤業務を覚えて独り立ちという形ですね。
説明を受けながら見て覚え、その後は自分でもやってみる。
これを繰り返して、少しずつ業務を覚えていきます。
この辺の具体的な話は、下記記事もご覧ください。
プリセプター制度ならではの特徴は、「評価シート」があり「指導者が同じ」点ですね。
「評価」と「相談」の実施
プリセプター制度ならではの流れに、下記要素があります。
- 評価シートの記入
- 業務の振り返りや目標設定
評価シートは、業務の習得状況を判断するための書類。
下記の様な内容について、自己評価とプリセプターによる評価を記入します。
- 職場内ルールは理解できたか?
- 利用者に安全な介助ができ、上手くコミュニケーションが出来てるか?
- 分からない事や難しい事
職場でこうした評価チェックシートが用意されます
この評価シートは、大体1~2ヵ月おきに記入します。
自己評価後、さらにプリセプターが評価・相談を実施。
それを上司に提出・報告する流れですね。
振り返りと目標設定について
評価シートの記入を通し、新人とプリセプターは一緒に「業務の振り返り」もします。
- 「〇さんの介助が難しい」
- 「こういう時はどうする?」
- 「この業務は出来るようになってきた」
大袈裟な事はなく、こういった話を落ち着いてするだけです。
「次はこの業務に自信を持てるようになろう」と、教育方針を調整する場ですね。
自己評価を通し、新たな目標設定をする時間です。
指導期間や目標は職場により異なる
プリセプター制度の指導期間は、職場により異なります。
また「何をどのレベルまで」という目標設定も職場毎で違います。
一般的には、独り立ちまでとする職場が多め。
ただ現場での新人指導を見ていると、これよりだいぶ短い事が多いですね。
3~6ヵ月ぐらいがリアルな数字でしょう。
日勤帯のマスターをゴールとする事もありますし、施設の考えでも変わってきます。
何にせよ、大事なのは焦らず無理しない事です。
出来ない事や不安も、きちんと伝える事が大切ですね。
介護プリセプター制度のメリットとデメリット
プリセプター制度は魅力が多いですが、完璧なモノではありません。
そのメリットとデメリットを整理すると、要点は下記。
- 新人職員の居場所と役割を確保、定着に繋げられる
- お互いの信頼関係や相性により、上手くいかない事もある。
新人と指導者の固定は、メリットにもデメリットにもなり得るという事ですね。
【メリット】新人が居場所と役割を確保できる
プリセプター制度のメリットは、既述の通り「新人の早期離職を防げる」ことです。
入職してすぐの頃は、精神的な負担も大きくなります。
仕事が分からないのもそうですが、慣れない場所は居心地が良くないものです。
その点、「プリセプターの側で指示を受ければよい」という安心感が大きいですよね。
少なくとも「どこで何をするか」が明確なので、居心地の悪さは軽減されます。
慣れた職員に指導を受け続けられるので、質問もしやすいですね。
プリセプターは、新人職員と他職員を繋ぐ役割もあります。
仕事だけでなく、円滑に人間関係を築くサポートもしてくれます。
自分の理解者が側にいる事で、安心して効率的にスキル習得を進められますね。
【デメリット】関係性や指導力の影響が大きい
この制度では、良くも悪くもプリセプターと新人の関係性が深くなります。
その為、プリセプター制度では下記デメリットも存在します。
- 信頼関係により、指導が上手くいかない事がある
- 関係性が深くなるので、お互いに疲弊する可能性もある
- 他職員の指導を受けにくくなる
この制度は、新人とプリセプターが上手くいくのが前提の様なとこがあります。
相性や関係性、意欲や指導力など、これらが噛み合ってこそなワケですね。
リーダー等からのフォローも有りますが、やはり中心はプリセプターです。
人間同士なので相性もありますし、指導力や仕事意欲の違いもあります。
新人がかえって疲弊したり、プリセプター側が指導に悩む事も出てきますね。
また新人指導がプリセプター任せになってしまう問題もあります。
新人もプリセプター以外には頼りにくい状況になります。
良くも悪くも、お互いの相性や能力次第にかかってます。
プリセプターに求められる役割は数多く、他職員のフォローも必須ですね。
転職では「介護プリセプター制度のある職場」が良い?
介護の仕事を始めるにあたり、「プリセプター制度の職場を選ぶべき?」と悩みますよね。
個人的には、興味があれば選んでみると良いと思います。
…というのも、介護現場では「新人の早期離職」がよく起こってるため。
記事中で話したように、「新人職員への配慮不足」は現場にいても感じます。
誰が教えるかも曖昧で、新人が放置されてしまう事もよくあります。
それならば、いっそプリセプター制度に期待してみてはどうでしょう?
経験問わず、「馴染めるか不安」という方は検討してみて下さい。
もし気になる様でしたら、転職サイトで調べてみて下さい。
フリーワード検索でもいくつかヒットしますし、アドバイザーの協力も得られます。
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