介護における重要なコミュニケーション技術である「傾聴」。
傾聴とは「相手の話を、受容と共感の姿勢を持って聞く」といった事を言います。
ただそう言われても、よく分からない方も多いと思います。
そこで当記事では、傾聴とは何かを介護職向けに解説します。
- 傾聴の意味と役割
- 介護現場での具体的な傾聴方法とコツ
- 傾聴のスキルアップ、学習情報
傾聴の基本的な内容から、経験を交えた実践的な傾聴方法のアドバイス。
よりスキルアップしたい方向けの学習情報まで、詳しく解説します。
介護における傾聴とは?
傾聴とは、「相手の言葉や気持ちを真剣に受け止め、熱心に話を聞くこと」を指す言葉です。
介護においてはそうした対応、コミュニケーションスキルを指す事が多いですね。
単に聞くだけでなく、相手の気持ちや状況に共感し、尊重する姿勢が傾聴において重要です。
傾聴の意味と具体的方法
傾聴とは、「相手の話に共感して熱心に聞く事」とお話ししました。
傾聴で大切なのは、受容と共感の姿勢で聴く事です。
介護コミュニケーションにおいて、受容と共感は特に重要視されます。
言い換えると、「相手の立場や気持ちに同調(受容)」する。
「否定せず受け入れる(共感)」姿勢で聴く事ですね。
下記にもう少し具体的な傾聴方法を示します。
- 不満や悩みを言わせてあげる
- じっくり話を聞く
- 相手が欲しがってる言葉まで考え返答する
例えば「〇〇が辛い」と言われたら、「そうだよね」と相手の気持ちに寄り添う返事をする。
こちらに怒っていれば、じっくり話を聞き謝る。
正しい対応は相手や場面で異なりますが…
生活の不満や悩みといったものに、共感して受け止める姿勢で聞く事ですね。
ただ受け止め、聞いてあげるだけでも傾聴の意味はあるのです。
傾聴の役割と重要性
介護現場における傾聴は、利用者との信頼関係を構築するのに役立ちます。
それだけでなく、不穏を落ち着かせる。
ケアの質を高めるといった効果や役割にも期待できます。
- 利用者との信頼関係を構築する
- 不満や怒りなど、相手の負の感情を緩和する
- ケアの質を高め、仕事をやりやすくする
介護現場の高齢者は、日常生活で様々な悩みや不安・不満を抱えています。
また話し相手も少なく、孤独な人も少なくありません。
そんななか、「話を聞いてくれる存在」はそれだけで心の助けとなります。
傾聴は介護職にもメリット大
介護職にとって傾聴は、相手だけでなく自分にも利益があります。
相手からの信頼を獲得したり、気持ちを和らげれば、自分の仕事もしやすくなります。
時に「あなたが言うなら」と協力や納得を得たり、思わぬ本音が聞ける事もあります。
傾聴を活用すれば、自分も働きやすくなり、結果ケアの質を高める事にも繋がります。
介護職員としての評価も、自然と高くなる事でしょう。
相手を思いやることで、自分もまた気遣いをもらえるのです。
介護職の仕事で役立つ「具体的な傾聴の方法とコツ」
ここからは、介護職向けにより具体的な傾聴方法を説明します。
- 傾聴や高齢者との接し方の基本
- 自分で実践して効果があったこと
- 傾聴をすべきタイミング
介護職が仕事で傾聴を行う際のコツ、行うべき場面などを解説。
自分が上手くいった経験なども、共有していきます。
目線の高さを合わせる
介護コミュニケーションの基本では、「目線の高さを合わせる」という事がよく言われます。
これは傾聴においても重要で、「話を聞く姿勢」を相手に伝える事に繋がります。
- この人は自分の話を聞いてくれるつもりだ
- 自分の存在を気にかけてくれてる
- 自分の話を真面目に聞いてくれそう
相手に上記の様な印象を与える事ができます。
自分を聞く立場に置き換えると、目線の高さで印象が変わるのが分かると思います。
高齢者相手では、つい見下ろす目線になりがち。
傾聴の際は、腰を下ろして目線高さを合わせ、近くに寄り添う事を意識しましょう。
「味方である事」を意識づける言葉かけ
傾聴を説明するにあたり、「積極的な聞き手である事」と言われる事もあります。
相槌や質問が必要な場面もあるという事ですね。
実際の介護では、無理な要求や難しい内容の解決を求められる事もよくあります。
だとしても、「何も出来ないが気持ちは分かる」という姿勢で聞くのが大切です。
- 職員の立場なので出来ない事もあるが、気持ちには共感できる
- 一緒に困ったり、悩む
- 上手くいくか分からないが、他の人にも話しておく
難しい内容でも、こうしたニュアンスの言葉かけをしてみて下さい。
何も出来なくても、「一緒に困ってあげる」「味方でいてあげる」。
これも傾聴方法の1つです。
ちょっとあざといですが、「自分を理解してくれてる」と印象づける事ができます。
ジャスチャーも交える
「相手に話が伝わってない」というのも、介護ではよくあります。
高齢者には耳の遠い方も多く、言葉だけでは不十分な事も多いです。
また難しい言葉を使ったり、多くの事を一度に話しても伝わりません。
コミュニケーションの際は、積極的に活用しましょう。
言葉以外という話ですと、優しく手を握るのも効果的。
言葉の疎通が難しい認知症の方、相手が泣いてる時など、安心感を与える事ができます。
ここまでの話は、傾聴に関係なく介護コミュニケーションで大切です。
下記記事でも扱ってるので、ご参考下さい。
「愚痴」「文句」は言わせてあげる
介護で傾聴が必要な場面では、相手が不穏である事が多いです。
- 怒っている
- 悲しんでる
- 混乱している
相手がこうした状態で、激しい感情を出してる時ですね。
特に怒っている時には、こちらの声はすぐには届きません。
まずは文句や愚痴を言いたいだけ、言わせてあげましょう。
落ち着いたところで、相手の気持ちに寄り添った言葉で素直に謝ります。
やってみると分かりますが、これはかなり効果があります。
自分に対する敵意も緩和でき、友好関係も築く事が出来ますよ。
相手の怒りが収まらない時、ぜひお試しください。
じっくり時間をかける
先の話にも関連しますが、傾聴はじっくり時間をかけて行うのも有効です。
下記効果を期待できます。
- 信頼関係を築く
- 嫌な気分を発散したり、気持ちを落ち着かせる
- この人は自分にとって味方だと印象づける
どれも介護コミュニケーションにおいて、重要な事ばかりです。
しかし忙しい介護職にとって、「時間をかけて」というのは難易度が高いと思います。
ただその分、傾聴による効果は期待できます。
ここぞという時にしっかり時間をかけて傾聴してみましょう。
介護現場での傾聴事例
ここで少し、介護でよくある事例も紹介したいと思います。
- 家に帰りたい
- お金がない、物を盗られた
- 身体が辛い、そっとしてほしい
例を挙げれば枚挙に暇はありませんが、これらもよくある場面です。
ここでも受容と共感の傾聴が役立ちます。
共感も行き過ぎると、相手の気持ちを落としてしまう事になりかねません。
物がないなら「一緒に探してあげる」。
そっとしてほしいかもしれないけど、「顔だけ少し見に来たよ」など…
時に相手が言われたら嬉しい事を考え、安心感を与えてあげる言葉かけも必要です。
この時の声掛けや言葉の温度感も、相手をよく見て考える必要があります。
例えば「認知症の度合い」等でも、かけるべき言葉も変わりますね。
認知症が強い方であれば、「明日迎えに来るから」という嘘が必要になる事もあります。
ケースバイケースなところもあるので、他職員と相談しつつ言葉かけを考えてみましょう。
⇒介護における「ケース記録」の書き方
介護コミュニケーションの関連情報
次は、傾聴に関する学習情報をご紹介します。
「もっと傾聴スキルを学びたい」という方に役立つ、書籍や資格情報をお伝えします。
傾聴スキルの学習書籍
傾聴スキルに関する学習書籍も、実は色々と出回ってます。
今回は介護職向けの内容で2冊ピックアップ。
「対人援助の現場で使える 傾聴する・受けとめる技術 便利帖」
実践的な傾聴スキルや声掛けを学ぶなら、本書がオススメ。
介護福祉士はもちろん、社会福祉士やカウンセラーなど様々な対人援助職を対象としてます。
【内容 ※商品説明より】
介護の現場で役立つ“言葉がけ”の基本を、「起きない」「寝ない」「入浴しない」
「排泄・整容」「食べない」「レク不参加」などのシーン別に紹介。
介護現場以外のシーン解説も多いですが、介護で活かせる聴き方も具体的に解説されてます。
「傾聴」に重きを置いて、コミュニケーションを学びたい方向け。
「介護で使える言葉がけ シーン別実例250」
こちらは介護職向けに、声掛け方法を解説した書籍。
傾聴だけでなく、様々な介護シーンでの声掛け方法が説明されてます。
【内容 ※商品説明より】
介護の現場で役立つ“言葉がけ”の基本を、「起きない」「寝ない」「入浴しない」
「排泄・整容」「食べない」「レク不参加」などのシーン別に紹介。
認知症対応も含め、介護でよくある場面を具体的に紹介してます。
介護職のより実践的な声掛けを学びたい方にオススメ。
⇒初心者介護士へオススメしたい本まとめ
傾聴の学習資格
傾聴を学べる介護資格もあるので、ご紹介しておきます。
「高齢者傾聴スペシャリスト」という資格で、ユーキャンの通信講座で取得できます。
学習内容は、相槌や質問などの傾聴スキルが中心。
講座内では、高齢者や認知症の方の心理についても解説してます。
ユーキャンでは、他にも多数の介護資格を取得できます。
「資格取得の課程での学習」がメインですので、気軽に挑戦して下さい。
また傾聴ボランティアに興味がある方も対象、ボランティア参加等の解説もあります。
さいごに
今回は、「傾聴の役割と方法」を介護職向けに解説しました。
受容と共感とは言いましたが、やってみると意外と難しいです。
自分の心に余裕がないと、なかなか出来ない事なんですよね。
「言いやすいから…」と頼まれごとも増えますが、メリットの方が大きいですよ。
日々の業務でも、少しずつ意識してみて下さい。
また似た話題に「スピーチロック」というモノがあります。
これは「ダメ」「~しないで」など、言葉で相手を拘束する事を意味します。
傾聴と真逆ともいえる、やっちゃダメな声掛けの事ですね。
現職の方は分かると思いますが、悪意無くつい使ってしまう言葉ですよね。
言い換え等で対策もできるので、良かったら解説記事もご覧ください。
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