介護職員の記録業務でも、特に悩ましいのは「ケース記録」。
「ケース記録には何を書くべき?」「いつケース記録を書けばよい?」など…
難しく思ってる方も多いのではないでしょうか?
そんな方の為に「ケース記録の書き方」を詳しく解説します。
- ケース記録を書くべき時
- ケース記録の例文
- 分かりやすい介護記録を書くコツ
現場経験を活かし、これら情報を例文多めで未経験者向けにまとめました。
特養や有料老人ホームなど、入居施設にお勤めの方は特にご参考頂けると思います。
介護におけるケース記録(ケア記録)とは
介護におけるケース記録とは、主に「文章での生活記録」を指します。
※ケア記録、生活記録とも呼ばれます
- 生活の様子や特変
- 行った介助や支援の内容
- ご家族とのやり取り
上記のような生活・支援内容に関する、文章での生活記録です。
例えば「起床介助を行った」「体調不良の様子があり検温した」という感じの記録ですね。
簡単に言うと、出来事の記録ですね。
「利用者の様子」を示す文章記録
まず介護職員がつける記録には、様々なモノがあります。
- 食事・水分量
- 入浴やレクリエーションの実施状況
- 排泄記録
こうした数字やチェックとは別に、文章での生活記録も必要になります。
例えば、昼食の「食事量1割 水分50ml」という数字記録があったとして…
それとは別の「入浴の疲れがあり食事進まず」という状況を示す文章がケース記録です。
⇒介護施設での「介護記録の書き方」とは?食事量から排泄の記入例
ケース記録の必要性と目的
介護施設は、介護保険法により介護記録等の整備が義務付けられてます。
参考:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
それだけでなく、ケース記録は下記目的で必要となります。
- 法的な記録証明
- 職員間での情報共有
- ケアプラン等の反映
これらは、介護記録全般に言える事でもあります。
まずは「適切なケアをきちんと行った」という証明ですね。
事故時やケアの質が問われた際、適切な対応をした証明記録となります。
職員や事業所を守る大切な資料となるので、必要事項の記録と保管が求められます。
本人の状態やそれに対する対応などを記録します。
職員間での情報共有
次には、利用者情報の共有です。
「この日に転倒があった」「体調はどうか?」など…、
ケース記録を読めば、利用者の具体的な状況が把握できます。
介護サービスは、利用者様それぞれのケアプランにそって提供されます。
ケース記録があれば、「適切なケア」が行えてるかや「新たな問題」を読み取る事が出来ます。
その人に必要な介護サービスやケア方法を考え、見直しをする際にも大切な資料ですね。
ケース記録を書くべき時
ケース記録を書くべき時は、主に下記の様な時です。
- 行った介助や支援の内容
- 体調不良やケガの気付き、その経過
- ご家族とのやりとり
- 他職員と共有したい利用者様への気付き
順にみていきましょう。
「介助・支援」の内容
まずは「介助や支援の内容」です。
起床介助やトイレ介助、巡視といったモノですね。
これも適切なケアの証明として重要です。
実際には、「起床介助行い、フロア誘導」など定型文を使用する事が多いですね。
細かな様子や必要な介助を記録できると、他職員にも分かりやすい記録になります。
事故や体調不良などの「特変」
分かりやすいのは、「事故」「体調不良」があった時。
- 転倒やケガ発見時などの「介護事故」
- ヒヤリハットなど「危険への気づき」
- 熱発や気分不快など「体調不良」
これらは発見時の事だけでなく、その後の経過についても記載しましょう。
介護事故やヒヤリハットは、専用の報告書もありますが介護記録への記入も必要です。
これらについては、状態だけでなく、経過や対応も含めて記載します。
- 熱感を感じ検温、37.5℃の発熱あり。
NS報告し頭部クーリング開始 - 「財布がない」と落ち着かず、心配ない事伝えるも納得されず。
遠目で見守り、様子見する - 日中の打撲の痛みを尋ねるが、「痛みはない」との返答。
見た目にも特変は見られず。
例文を出すと、こんな感じです。
他にも、「いつもと様子が違う」「他職員に伝えるべき」と思ったら、文章で残すと良いですね。
ご家族様とのやり取り
他には、「ご家族様とのやりとり」もケース記録に残します。
- 物品を預かった、又は依頼した
- ご家族様より、相談や話を受けた
- 面会があった
こうしたやり取りですね。
介護士としては、衣類や物品の預かりが多いかと思います。
「何をどれだけ預かったか」まで、記録に残せると理想ですね。
介護施設における「ケース記録の例文集」
それでは例文も交え、具体的なケース記録の書き方を確認します。
今回は、介護施設の例を使って解説します。
入浴・食事や夜間帯など、各生活シーンについて、例文を見ながらポイントを見ていきます。
日中のケース記録の例文【入浴や食事】
下記は、食事や入浴等、日中の様子を中心としたケース記録の例文集です。
日時 | 項目 | 内容 | 記録者 |
---|---|---|---|
7:00 | 起床 | 職員の声掛けにて覚醒。 トイレ・更衣整容済まし、フロアへお越しになる。 | 〇〇 |
8:00 | 朝食 | 主食完食、副食7割。 副食のブロッコリーは「固いから」と残される。 上の義歯装着時に痛みあり固い物が食べにくいとの事。 朝礼にて相談員へ報告する。 | 〇〇 |
10:00 | 入浴 | 個浴にて入浴、更衣や入浴動作はほぼ自立にて行える。 洗身時、ご本人より「背中は洗って欲しい」とあり介助。 右大腿部に掻き傷あり、NSによる観察・軟膏塗布行う。 | △△ |
14:00 | 面会 | 職員付き添いのもと、相談室で娘様とオンライン面会行う。 ご本人冬物の上着を依頼され、「近日届けます」と娘様より。 | △△ |
15:00 | 生活状況 | おやつ声掛けに訪室すると、「だるい」と言葉あり検温。 KT37.5ありNS報告、頭部クーリングの指示有対応。 「おやつはいらない」との事で、お茶のみ居室へ提供。 飲水を促し、退室する。 | △△ |
何となく、雰囲気は掴めたでしょうか?
食事や入浴は、その詳細について記入がよく求められる場面です。
食事については、「食事動作」や「咀嚼・嚥下の状態」。
入浴時は、「入浴動作」や「身体状況の観察・処置」などを積極的に記録するようにしましょう。
それとは別に、何か入浴時の特記事項がある時はケース記録も入力しましょう。
夜勤帯のケース記録の例文【巡視など】
こちらは、夜勤帯のケース記録例です。
日時 | 項目 | 内容 | 記録者 |
---|---|---|---|
20:00 | 就寝 | 口腔ケア、トイレ誘導実施。 臥床し、就寝される。 | 〇〇 |
22:00 | 巡視 | 巡視、入眠を確認。 | 〇〇 |
0:00 | 巡視 | 巡視、良眠中 | 〇〇 |
2:00 | 巡視 | 巡視、ベッド上で覚醒あり。声掛けし、トイレ誘導実施。 パット・トイレ内で中量の排尿あり。 | 〇〇 |
3:00 | 生活状況 | センサー反応あり、訪室。 朝と勘違いされており、時間お伝えし入眠を促す。 | △△ |
ケース記録の入力は、介護ソフト上で行うのが主流です。
ソフトにより入力項目は異なりますが、「日時・内容・入力者」あたりがテンプレですね。
ケース記録の他、食事量や入浴、バイタルの入力も行える。
記録を楽にする「介護ソフトの便利機能」
介護ソフトには、ケース記録に関する便利機能が色々あります。
- 文章テンプレートの作成
- 記録の一括入力
よく使う「定型文」を用意したり、複数名に同じ文章を「一括で入力」したりできます。
例えば、夜勤の巡視での「巡視、良眠中」といった記録。
この機能を使えば、巡視で寝てた方を対象に上記文章を一括入力できます。
分かりやすい介護記録の書き方
分かりやすいケース記録を書くには、必要な情報を簡潔に書く事が大切です。
その為には、下記ポイントを意識しましょう。
- 5W1Hを意識
- 客観的な事実を書く
- 文章は簡潔にまとめる
順にみていきましょう。
「5W1H」を意識し客観的事実を伝える
5W1Hとは、「いつどこで誰が何をどうしたのか」という内容。
ケース記録の特性上、「いつ・誰が」は文面では省略する事が多め。「どこで何をどうしたか」から書き、伝わりにくい時は「職員」「ご本人」と付け加えると良いでしょう
またケース記録を書く時は、客観的事実をありのままに伝える事が大切。
「私はこう思う」という主観的な表現は控えて下さい。
状況や介助内容、本人の言葉を中心に記載するようにしましょう。
必要な情報を簡潔に書く
ケース記録では情報量があった方が良いですが、不必要な情報を削る事も大切です。
冗長な表現は控え、短く簡潔な文章を心がけると読みやすくなります。
文が長くなる時は、適度に句読点を入れ区切るとより分かりやすくなります。
例えば、下記の文章。
この場面では、「職員が何をしてたか」は重要ではなく不要。
文章も少し長くなっているので、簡潔な言い回しにしてみましょう。
あまり例が上手な例が出せなかったかもしれませんが、「不要な情報は書かない」。
「短く簡単な言い回し」が出来ないか考えると、より分かりやすい介護記録に繋がります。
記録での言葉遣い
先に例文を紹介しましたが、介護記録では「である、~する」の常体という文体を使用します。
下記例文のような表現ですね。
- トイレ訴え頻回にあり、便意あるが排便には至らず落ち着かない様子
- パット交換実施、排尿と中量の排便あり
- 「お風呂で疲れた」との事で、午後は居室ベッドで休まれる
新聞やニュース記事をイメージすると分かりやすいです。
敬体と呼ばれる「ですます調」は、基本的に使用しません。
言葉や表現が思い浮かばない時は?
記録に書くべき事はあるが、文章が思い浮かばない。
そんな時は、他人の記録を読むとヒントが得られます。
それに介護現場では、よく使う言葉や表現もある程度決まってます。
もし困ってるなら、一度「文例集」などの書籍も参考になりますよ。
仕事効率もアップするので、ぜひ習得しておきましょう。
また専門用語は必ずしも使う必要はなく、事実を分かりやすく伝える事が優先です。
しかし他人の記録を理解するには、専門用語を学ぶ価値もあります。
略語も多く、上手く使えば簡潔で見やすい文に出来ますよ。
さいごに
今回は「ケース記録の書き方」をご紹介しました。
ケース記録は、介護記録の中でも最も作成に悩むところです。
ただ文章記録が上手くなれば、事故報告や日誌の書き方も見違えてきます。
書くべき事も見えてくると、申し送りも上手になりますよ。
介護士としての能力アップに間違いなく繋がるので、この機会にぜひ意識してみて下さい。
コメント