グループホームや特養など、介護施設でよく聞くユニットという言葉。
個別ケアやユニットケアといった言葉も、耳にした事があるのではないでしょうか?
ユニットとは、介護施設における1つの生活グループを言います。
ユニットを採用したユニットケアでは、個人を大切にしたケアを目標としています。
ユニットケアのメリットや問題点など、お話ししていきます。
介護施設におけるユニットとは
ユニットとは、介護施設における生活グループの単位です。
9~10人程の利用者様を1つのグループとし、固定のメンバー・職員で生活します。
※職員とは介護職員を指します
これが簡単に言う、ユニットの単位です。
言葉だけでは理解が難しいと思いますが、順に説明していきます。
ユニット型施設の特徴
ユニットを採用している施設は「ユニット型施設」と呼ばれます。
こうした施設では、ユニット毎に独立した生活スペースが作られます。
職員の勤務シフトも、ユニット毎に独立して作成されます。
下記は代表的な代表的なユニット型介護施設です。
- グループホーム
- 特別養護老人ホーム(ユニット型)
- 介護老人保健施設(ユニット型)
例えば、「グループホーム」は2ユニットの小規模施設。
これは全ての施設で共通しています。
一方で特養や老健の様に、一部施設でユニット型を採用する施設もあります。
この場合、「ユニット型特養」という感じでその名称で呼ばれますね。
介護施設での1ユニットの作り
下記は、グループホームの1ユニットを再現した図です。
GHのユニットの作り
ユニット型の施設では、居室は全室個室です。
共有スペースにそって居室が配置され、それらが主な生活の場となります。
トイレやお風呂場は共用、食事は主に「共有スペース」で提供されます。
ユニット型の施設では、たとえ大規模施設でも家庭的な雰囲気で生活する事が出来ます。
1つの施設に、小さな施設な複数存在するようなイメージですね。
グループホームと特養等の違い
施設毎のユニットの違いも紹介します。
先ほどの「グループホーム」と「特養」で比較してみましょう。
特養等でも基本は似た作りですが、下記の様な違いがあります。
- 1ユニットの利用者数
⇒グループホームは9人、特養等では10名 - 施設の作りやユニット数
グループホームの特徴
グループホームは認知症の方に向けた施設です。
それに配慮し、1ユニットの利用者は9名までと決まってます。
ユニット数も2つまでなので、施設全体でも最大18名ですね。
夜勤帯も、2ユニットそれぞれに職員が配置されます
食事の調理も利用者の側で行われ、家の延長を強く意識した作りになっています。
特養等に比べ、1ユニットの人数が少なく、施設も小規模です。
ユニット型特養等の特徴
ユニット型特養では、1ユニットの利用者数は最大10人までです。
大規模施設ですので、ユニット数も多く、一部はショートステイに対応してます。
大きな施設の中に、小さな施設がいくつもある感じですね。
2ユニットを1つのグループとし、隣接させた作りが多くあるのも特徴。
この2ユニットは協力ユニットとも呼ばれ、職員が2ユニットを担当する事も多いですね。
日中は1ユニットごとに職員が置かれますが、夜勤帯は1人で2ユニットを担当します。
なお利用者の生活は、1ユニット毎に独立しています。
例えが下手ですが、家は違うけど同じ地区に住んでいる感じです。
ユニットケアの目的・メリット
ユニット型施設の目的は、利用者が安心して生活し、個別ケアを受ける事が出来る事です。
個別ケアとは、個人の生活スタイルを尊重し、より1人1人に合わせたケア方法を言います。
ユニット型施設では、職員が少人数と深く関わる事で、より利用者を理解したケアが実施されます。
ユニットケアのメリットとは
ユニット型施設では、職員・利用者を固定し、馴染みの関係を持つ事が特徴。
それにより利用者を深く理解した個別ケアを実施し、安心した生活の実現が目的です。
この様に、ユニット型を採用し個別ケアを重視する方法を「ユニットケア」と呼びます。
ユニットケアでは、従来の決まった生活スタイルでなく、自分らしい生活を重視。
個人が必要とするケアを実施する事が可能です。
- 職員と利用者の信頼関係ができる
- 慣れた利用者同士で安心して生活できる
- 職員の利用者理解が深まる
より個人に焦点をあて、その人が抱える悩みや問題を解決しようとする介護方法ですね。
小規模生活を実現する事で、認知症の方に安心感を与える目的もあります。
「利用者の尊厳」や「プライバシー」を守る事が可能
例えば特別養護老人ホームは、現在こそユニット型が主流ですが昔は違いました。
長い廊下に多床室が並ぶ、病院じみた作りが主流だったのです。
そこでは職員都合が強く出てしまう側面があり、下記の様な問題を抱えていました。
- 利用者のプライバシー配慮への欠如
- 効率を重視した流れ作業的なケア方法
効率を求めるあまり、利用者の尊厳が損なわれてる事が問題視されたのです。
この様な指摘を受け、特養はユニットケアが推奨されるようになりました。
新設の特養はほぼユニット型がですが、昔ながらの施設も存在してます。
これらは「従来型」と「ユニット型」呼び、区別しています。
一方グループホームは、元よりユニット型として作られた介護施設です。
…よって、全てユニット型の小規模となっています。
理由としては、認知症の方は大規模大勢の生活に適応しきれず、不安を抱えてしまう為です。
認知症でも安心できるよう、馴染みの少人数と適応しきれる範囲で暮らせるように設計されてます。
利用者や職員のユニット異動はある?
利用者に関しては、基本的に入居後のユニットや居室の変更はありません。
ただし生活上の問題点が出てきた場合、ユニット内で居室変更が検討される可能性があります。
基本的には、ケア方法の見直しなどで解決される為、変更となるケースは極わずかです。
居室の空き状況などもあり、必ずしも考慮されるとは限らない様です。
職員に関しては異動の可能性がいくらかあるので、後述。
職員の配置と異動
固定のメンバーというのがユニットケアの特長ですが、介護職員の異動はあります。
頻繁にはありませんが、下記の様な理由で異動が発生します。
- 人員不足
- リーダー就任
- 職員の適性
特定のユニットで人員が不足したり、新たに役職に就いた場合などですね。
ユニット型施設では、身体介助量など、ユニット毎に仕事内容が大きく異なります。
その為、職員の適性をみたり、成長を促す目的での異動もあります。
介護職員の配置状況
ユニット型施設でも、他と同様に24時間体制で介護職員が配置されます。
※看護師など、他職種は夜間は常駐していません
- 早番(7:00 ~ 16:00)
- 日勤(9:00 ~ 18:00)
- 遅番(11:00 ~ 20:00)
- 夜勤(16:30 ~ 翌9:30)
施設問わず、大体こんな感じです。
各ユニットで、毎日それぞれ1名ずつ職員が置かれるようになっており、日勤がいない日もあります。
ユニットケアの問題点【デメリット】
ユニットケアのメリットは大変良い事ですが…、同時にいくらか問題点も抱えてます。
従来型=悪と決めつけるのは、少し違う様です。
現場を知る身としては、こんな問題点があると思っています。
- ケアの目標が必ずしも達成出来てはいない
- メンバー固定による弊害
- ケアの質の格差
メンバー固定による弊害
職員や利用者の固定は、デメリットもあります。
利用者や職員間でも相性というモノがあり、そこに問題が発生すると逃げ場が少ないという事。
他の方の大声等、問題行動に困っても、すぐに場所を移る事が出来ません。
ユニットケアは、特に認知症の方向け施設に敷かれた制度ではあるものの…
クリアな方を主として、全ての方に適した仕組みとは言えないでしょう。
夜勤中に訪室すると、「個室は寂しい」と多床室を望む声もよく聞きます。
職員による「個別ケアの質格差」
メンバー固定による弊害がもう1つ、ユニット間におけるケアの質の格差です。
介護士が固定の少人数という事で、同じ施設でもケアの質に大きな差が出来る事があります。
同じ職員の対応が増える事で、サービスの質がその職員の能力に大きく左右されます。
ケア方法を統一する仕組み、しっかりと職員を指導・管理できるユニットリーダー等が必要です。
職員不足により効率化せざるを得ない現状
そもそも個別ケアの実施には、マンパワーが必須です。
個人に合わせたケアを行うには、仕事の効率を捨てる覚悟が必要です。
好きな時に食事を摂るにしても、要介護にある方ですので見守りが必要です。
他の方も同時にみるので、全て対応しきる事は難しいのです。
職員の志が高くとも、人員不足により最低限のサービスしか実施できない事もあります。
ユニット型施設だからと言って、十分な個別ケアが実施できるとは限らないのです。
これは介護業界全体の問題でしょう。
問題点も感じていますが、ユニット型施設で働き、個別ケアの良さを実感したのも事実。
職員としては、より入居者様を理解し、しっかりとしたケアが出来ている様に思います。
ユニット型施設が全てではありませんが、正解の1つとして捉えて頂ければと思います。
ユニット型の介護施設を探す
ここからは、ユニット型施設を探す際の注意点についてお話しします。
- 利用者として入居する
- 職員として入職する
それぞれの目線でお届けしましょう。
入居施設として探す際の注意点
ここまでの特長を理解したうえで、ご本人がユニット型施設を望むのか確認して下さい。
ユニット型施設は、プライバシーを保護しつつも、孤独を感じにくい作りです。
ですが、煩わしさを感じる方もいますし、個室を望まない方もいます。
ご家族が判断されるのであれば、まずは入居条件や必要サービスから選びましょう。
下手に絞り込んでしまうと選べる施設が減ってしまいます。
まずは、利用したい施設形態を決めましょう。
そこからの施設選択で、ユニット型かどうかを判断材料にすると良いですね。
⇒入居できる介護施設の特徴を一覧で紹介
施設情報サイトを使う手もあります。
資料請求や施設見学、相談等のサービスが利用できます。
ユニット型施設で働く
働くとなると、グループホームか特別養護老人ホームが見つけやすいです。
なお、ここでの説明は介護未経験の方向けとなります。
まず注意しておきたいのが、ユニット型施設では夜勤は1人で対応するという事。
16時間、8時間と勤務時間の差はありますが、どちらでもそこは同じです。
もし不安なら、日勤パートとして勤務するのも良いと思います。
どちらも一長一短ですので、それぞれ説明します。
グループホームで働く
グループホームについてお話しします。
・入居者の人数が少なく、自立度の高い方が多い
・調理や献立も業務に入る
・重度の方に対応しておらず、看護師の配置義務もない
認知症があっても自立度が高めの方に向けた施設なのが特徴です。
特養に比べ、入居人数や身体介護が少なく、余裕を持って介護に慣れていけます。
オムツよりはリハビリパンツを使用して、トイレに歩ける方が多い感じです。
重度の方を想定した作りではありませんので、そこがネックでしょうか。
そうした方は住み続けるのが難しいですが、対応しなければならない期間はあります。
家事に慣れた主婦の方が、パートで働くにはぴったりの施設ですね。
女性が多めですが、男性の職員も活躍されています。
ユニット型特養で働く
続いて、特別養護老人ホームです。
・介護度3以上の方がほとんど、身体介護が多い
・施設設備が整っており、多職種で連携し働ける
・介護能力が身につく
特養は介護度の高い方が多く、身体介助も多いです。
健康リスクを抱えた方も多くいます。
しかし、入浴設備などはそれ向けに整っており、看護師も配置されています。
多職種がそろっているので安心感もあり、介助は多いですが、介護業務に集中できる環境です。
介護量の多さ、多職種と知識が共有出来る、という事から、介護能力・知識はかなり身につきます。
介護福祉士を取るころには、どこでも通用する介護士になっている事でしょう。
お給料も他と比べ、ちょっと高めな事が多いですよ。
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