過酷な労働環境が問題視される介護士。
人手不足による毎日の残業、またはサービス残業が当たり前な職場もよくあります。
「こんなに残業があるのはおかしい」と、悩む介護職も多くいます。
この現状だからこそ、残業を当たり前にしない意識が大切です。
そこで今回は、介護士経験を元に「介護職の残業実態」を解説。
平均残業時間やその理由、サービス残業や早出の実態など、細かに紹介します。
残業が少なく残業代もきちんと出る職場がある事も、知っておきましょう。
介護職の「残業時間」と「理由」
まずは介護労働安定センターの調査をもとに、介護士の残業・時間外労働の理由を確認します。
介護職の平均残業時間は「月10時間?」
令和4年度の調査では、介護職の時間外労働の平均は1週間に1.7時間。
正社員(無期雇用)の場合は、平均1.5時間という結果でした。
やはりパート職員より、正社員の方が多く残業していますね。
無期雇用の介護職員でも、「残業なし」は 56.5%。
参考:介護労働安定センター「令和4年度 介護労働実態調査」より
介護職の時間外労働は少なく見えますが、この人手不足です。
私含め、「もっと多いはずだ」という声も多いはず。
続いて、その理由も確認します。
介護職の主な残業理由は「利用者対応」「記録業務」
介護士が残業・早出といった「時間外労働をする理由」は何か。
少し古いデータですが、「全労連の介護労働実態調査」にリアルな理由が掲載されてます。
参考:全労連「介護労働実態調査 2019年版」より
「記録と情報収集」が始業前・後ともに約70%とトップです。
その後は、「利用者のケアに関する理由」が続きます。
10年近く介護士をしてますが、概ね納得の数字です。
申し送りなど利用者や業務の確認のため早出をし、記録作業が終わらず残業をする。
あるいは業務に余裕がなく早出をし、ケア対応が終わらず残業。
大体こんなところでしょう。
知り合いの話では、レクリエーションの準備作業でよく遅くまで残ってるとの事。
イレギュラーな事よりも、毎日の業務に時間外労働の理由があるワケですね。
申請しにくい為の「サービス残業・早出」も
先ほどの調査内で、サービス残業(不払い時間外労働)のデータもありました。
「残業代の支払い状況」についても、発生理由と同じような回答が集まっており、記録やケア対応など、毎日の業務でサービス残業が多く発生してます。
時間外労働が不払いとなる理由について、そのトップ3が以下。
介護士のサービス残業理由トップ3
- 自分から請求していない(79.3%)
- 請求できる雰囲気にない(40.3%)
- 支給されない業務や会議がある(25.8%)
参考:全労連「介護労働実態調査 2019年版」より
「残業申請がしにくく、日常的に残業がある」「だから請求もしてない」という事ですね。
介護士の場合も、残業申請するにはリーダーなど上司の確認が必要です。
面倒で申請しない時も多いと思います。
介護職の多くは「サービス残業が当たり前」
残業の発生理由は、毎日の業務に関わる事がほとんどでした。
そして、サービス残業も多く発生している事実もあります。
つまり介護業界では、「サービス残業が当たり前」になってる事実があります。
残業だけでなく、早出も同じです。
情報収集や朝礼・夕礼の出席。
こうした毎日の業務で、不払いの時間外労働が発生してます。
ただ働きを回避するには、慎重な転職活動が必要ですね。
残業早出が多い介護業界の実態
ここまでで、「介護職の残業時間はもっと多い」であろう事。
サービス残業が慢性化してるであろう事が見受けられました。
ここからは私の介護士経験を元に、残業実態をより具体的に語っていきます。
残業・早出しがちな仕事場面
残業が発生理由に、ケア対応や記録業務など問題がある事が分かりました。
それは具体的には、こんな内容です。
介護士が時間外労働する仕事場面
- 就寝介助
- 入浴介助
- ケア記録や業務日誌の記入
利用者対応では、起床や就寝、入浴介助がよく原因になります。
朝や夕方は、どこの施設も人員が少ない中での仕事になります。
誘導や排泄介助などが終わらず、定時を過ぎてしまう事は多いですね。
また入浴介助は、フロア見守りとは別に人手が必要となります。
そのため、通常は日勤者がいる職員数の多い時間に行われます。
しかし日勤者が上手く確保できない場合、これも残業理由となりがちです。
※介護老人福祉施設は週2回の入浴が義務なので、必須業務
記録業務をする暇がない
記録業務というのは、主に下記を指します。
- 日誌や申し送りの確認、記入
- 食事量やバイタル情報の入力
- 生活の様子などの文章入力
これら業務は、仕事中に専用の時間を設ける事が難しいのが現状。
隙間時間に行う必要がありますが、それも難しい職場も多くあります。
忙しい日では、定時で仕事を終え、初めてゆっくり作業できるなんて事も。
働いてるのに残業申請が通らない事も
また申請しない為のサービス残業も問題にありました。
介護職にとって、残業申請のしにくい状況は下記ですね。
- 何となく帰りにくく、残ってしまった
- 自分の時だけ業務が終わらない
- 残業申請が受理基準が厳しい
帰りにくかったり、「まぁいいや」とつい残ってしまう事もよくあります。
塵も積もればで、気付いたらサービス残業ばかりなんて状況も多いです。
また申請しにくいだけでなく、そもそも残業申請できない状況もあります。
例えば、下記の様な時ですね。
- 「事前申請のみ」など、申請しにくいルールがある
- 残業代がでる業務、時間が定められている
- 日常的に申請できない手順が求められる
厳しい職場になると、事前の指示が無い限り残業禁止。
仕事が終わらず残っても、残業代がつかない事もあります。
会議や委員会による残業
残業理由に「会議」や「委員会」への出席もありました。
別理由にあった「職場ミーティング」も、会議形式をとる事が多々あります。
これらは割と残業申請しやすい理由ですが、無制限に付けられる事は少ないです。
以前私が勤めていた職場では、会議での残業申請は2時間までと決まってました。
「そんな長い会議あるの?」と思われそうですが…、意外にあります。
利用者様対応について話し合う「ケアカンファレンス」「ユニット会議」等などですね。
職員が積極的に意見を出し、熱い会議になるとかなり時間がかかります。
また会議の開催にも、見守り役や議事録の作成など、沢山の労力が必要です。
真の原因は「介護職員の不足」
介護士の残業原因を辿っていくと、結局は職員不足ですね。
介護の労働環境を語ると、大抵の場合「職員が足りない」という結論に行きつきます。
色々述べましたが、介護士の残業はほとんどが日常的業務によるもの。
急なトラブルが原因となる事もありますが、多くは無いです。
- 利用者対応が終わらない
- 会議や書類作成の時間が作れない
- 休みや休憩が取れない
これらは人員に対する業務量の多さが原因。
業務効率や仕事の組み立てだけで、解決できる事は少ないです。
また職場側も、「出来れば職員に残業させたくない」と思ってます。
今介護現場に必要なのは、マンパワーですね。
「残業」でみる要注意な職場
同じ介護業界でも、働きやすさは様々。
残業時間も大きく異なります。
ここから紹介する内容があると、危険な職場のサインかもしれません。
「残業禁止」や「残業代が出ない」
正当な理由があるのに残業代が出ない職場には要注意。
「残業を無くそう」という取り組みは大切ですが、それを悪用するズルい職場もあります。
- 真面目に業務に取り組んだのに、残業申請が通らない
- 残業の指示を受けたのに、残業代がでない
- 残業が一切禁止
こうした事実があれば、疑問に思って下さい。
仕事をしていれば、どうしても残業が必要になる場面もあります。
「基本的に定時で帰る」「残業をした時はきちんと残業代が支払われる」。
これが健全な姿です。
- 必要があっても残業代は出さない
- どんな理由があっても残業は一切禁止
こうしたルールを公にしている職場は、ブラックと思って良いです。
夜勤者に残業をさせている
各シフトの中でも、特に疲れが出るのが夜勤明け。
介護現場で最も避けるべきは、夜勤者の残業です。
下記の様な状況があれば、危険な職場のサインです。
- 夜勤明けで入浴介助させられる
- 夜勤明けで会議などの再出勤を求められる
- 夜勤者の早出残業が多い
夜勤者の時間外労働が多い職場は、人手不足が深刻化してます。
そうでない場合、労働者への配慮が足りてません。
何にせよ、心身的に長く働き続けるのは難しい職場です。
消耗するだけなので、長居するべきではないですね。
深刻に考えた方が良いですよ。
残業が当たり前になっている
残業が慢性化している職場も要注意。
残業が当たり前になっているのは、職員不足のサイン。
業務負担も多く、不満が募りやすい環境です。
- 毎日の残業が当たり前
- 定時で帰ると怒られる
- 必要以上に早出を求められる
こうした状況があるなら、特に危険。
残業が当たり前すぎて、労働時間への意識が低下してます。
人手不足とモラル低下のダブルパンチですね。
残業代が出たとしても、体が持ちません。
早々に逃げた方が賢明ですね。
働きやすい介護施設もある!
介護業界では、働きやすさの職場格差が激しいです。
要するに、「職員が集まる職場」と「そうでない職場」ですね。
この現状でも、沢山の介護職が集まる職場も存在します。
良い職場には、給料や休暇など多くの魅力があります。
こんな事がザラにあります。
転職活動の際は、しっかりと情報収集をし、よく考えて職場を選びましょう。
介護職がサービス残業なしで働くには?
ここまでを踏まえ、介護士が時間外労働・サービス残業をなくす為の働き方を考えます。
「仕事での動き方」から「転職方法」まで、具体的にアドバイスします。
残業は必ず申請をする
シンプルですが、まずは「残業申請する」ことです。
既述の通り、「自分から申請してない」理由でのサービス残業が多く発生してます。
そうした空気も問題ですが、申請しなければ貰えるモノも貰えません。
また残業を好き放題つけられる職場は少なく、どこも申請時のルールはあります。
このルールに過剰に反応してしまい、「申請しても無駄」と諦める人もいます。
きちんと仕事をしてれば残業代が出る会社は多いので、あきらめずに申請しましょう。
申請書の「残業理由」の書き方
残業申請の理由をどう書いたら分からない方の為、記入例を用意しました。
残業申請に使える理由例
- 利用者様対応の為(業務多忙の為)
- ○○委員会(会議)出席の為
- 欠員発生(日勤不在)の為
書くべき文が分からない時は、上記をそのまま使ってOKです。
厳しい職場では、「書くべき文言」や「受付可能な理由」が限られてる事もあります。
職員定着率の高いホワイト企業で働く
時間外労働が発生するそもそもの理由は、職員不足です。
先に述べた通り、「魅力ある職場」を選ぶ事が重要ですね。
もしくは、「業務量の少ない施設種類」を選ぶ事です。
それが出来る環境があるか、しっかり見極めましょう。
いずれにしても、必ず上手くいく方法はありません。
そのためには、情報収集と比較を繰り返し、慎重な判断が求められます。
転職エージェントなどを活用し、上手く内部情報を入手しましょう。
また、雇用改善に取り組む施設も多く見受けられます。
多くは無いですが、介護にもホワイト企業は確実に存在します。
残業が少ない「施設種類」「雇用形態」で働く
職場の種類、雇用形態にこだわる手もあります。
- パートや派遣で働く
- なるべく介護度の低い施設を選ぶ
- 利用者数に対し、職員数の多い施設を選ぶ
残業時間は、正社員より非常勤の方が少ないです。
パートに正社員並みの待遇を用意する施設もありますし、介護派遣の時給相場も高め。
あえて非常勤で働くのも、賢い方法の1つですね。
また職場により、仕事が楽・キツイという差も確実にあります。
ただこれも利用者様の状態に左右されるので、判断の難しいところ。
個人的な経験としては、特養は介助量も残業も多め。
有料老人ホームは、比較的楽なイメージがあります。
ただしあくまで傾向ですので、あまり鵜呑みにしすぎないように注意です。
広い視野を持って転職活動に臨もうという事ですね。
スキルアップや業務効率の改善をする
「丁寧で仕事も早い人」というのは、存在します。
時間内に仕事を終えるには、効率も考えて動かなくてはなりません。
例えば、下記の様な内容も意外に仕事の速さに影響します。
- 声掛けやコミュニケーション能力
- やりすぎの介護を控える
- オムツ交換など、介助の手際を良くする
- 業務内容の改善提案をする
やりすぎ介護を減らす
まず考えてみて欲しいのが、利用者様の負担になる「やりすぎの介護」をしてないかという事。
「完食するまで食事介助」「長時間トイレに座らせる」等を必要以上にする事です。
オムツ交換であれば寒い思いをするし、だらだらと食事介助をしても負担になります。
ですが仕事をしてないと思われない為に、相手の意思や負担を無視してしまう職員もいます。
相手に不快な思いをさせ、自分も残業まみれ…と、誰も得をしません。
もし心当たりがあるのなら、自分のケア方法を見直してみましょう。
この辺の考え方は、下記記事も参考になると思います。
介護士としての総合力が仕事の早さに繋がる
介護では「早さ=手抜き」のイメージが強いですが、早さを求める事自体は悪い事じゃないです。
先の例はもちろん、貴方の対応を待ってる利用者様も多数いるのです。
⇒介護士のスキルアップになる資格と能力は?評価と仕事力を高める方法
コミュニケーション能力など、関係なさそうな能力も仕事効率に影響します。
介護拒否が減って仕事がスムーズになり、利用者様から信頼も人事評価にも繋がるでしょう。
また何もしない無駄な時間も極力減らす事です。
どうしたら無駄なく効率的に動けるか、日々考えながら働きましょう。
これらを事故リスクに配慮しつつ、臨機応変にこなさねばならないのが介護の難しいところ。
会議やミーティングで、業務ルールの見直しや改善の提案も積極的に行いましょう。
「残業を当たり前にしない」雰囲気作り
無駄に残業をしない意識も重要です。
「引継ぎの職員が大変だから」「何となく帰りにくい」、こんな理由で残ってないでしょうか?
介護はチームプレーの仕事ですから、人間関係も気になる事でしょう。
事実、相手を助ける事が良好な関係を築くきっかけにもなります。
⇒介護士の人間関係は悪い?良い関係を築くコツや実際のトラブル紹介
しかし、過剰な気遣いは身を滅ぼします。
自分の担当業務が終わったなら、さっさと帰る勇気も必要ですよ。
- 無駄に残業はしない
- 残業したら、申請をする
基本的な事を徹底する事で、健全に働ける雰囲気作りにも繋がります。
他職員とも声を掛け合うと、残業をしない意識を職場で共有しましょう。
最後に
今回は「介護士の残業理由と実態」をテーマにお話ししました。
介護現場では、職員不足により残業が多く発生しています。
…とはいっても、実際の環境には職場により大きな差があるのも事実です。
利用者様にとっても職員にとっても、必要なのはマンパワーです。
残業だけでなく、有給消化や仕事への満足度など、ホワイトな職場の条件とも言えますね。
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